第29話 争乱 2
「ロドエル・プラハロンド殿下のご入場です!!」
司会の声と共に、今回の式典の式場として使用される、プラハロンド王国の舞踏会場の大扉が開かれた。
「「「「おぅおおおおおおおおおおおお! プラハロンド万歳! ロドエル殿下万歳!!!」」」」
と、盛大に思える皆の祝福の声。
だけどよく見ると、声を上げているのはごく一部の貴族とその配下達で、各国からの招待客や、一部の官僚貴族は冷ややかに静観していた。
「あれが次期プラハロンド王国の王、ロドエル・プラハロンドか、見た限り凡庸よな」
一人の老人がぽつりと呟いているのを僕の耳には届いていた。
距離からすると30メートルはあるよね?
『はい、指定集音で複数指定した対象の音を、同時に聞き取れますので、ノール様の前では陰口は聞き逃しません』
ありがとうミネルヴァさん。
『いえ、当然の事です』
うん。
で、あの老人の横に居られるのはガラン殿下だよね?
『はい。あのご老人、ガラン殿下の血縁者ではないかと』
そうなの?
『骨格、髪質、肌成分、身体的特徴が類似します』
つまりガラン殿下のおじいちゃん?
「姫様、ガラン殿下の横に居られるお爺様は?」
「ん? ああ、あの方はドレイル様、私はジジ様と言ってお慕いしているグリアノール帝国の先代皇帝よ」
「へぇ、先代の皇帝・・・・え?! そ、そんな方も来ておられるのですか?!」
「まあね。グリアノール帝国とは数代前からの交流があって、特にプラハロンド王国の世代王、ルグエスお爺様とは親友の間柄だったから、私も身内の様に可愛がってもらっていたの」
「それで、姫様とガラン殿下は婚約されておられるのですね」
「ノールちゃん」
「え?」
「婚約はしてないから。これからもする気なんてないから」
「あ、えっと・・・はい」
圧倒的な圧力が僕の頭を握ってくる。
あ、姫様、本当に僕の頭を握っていたよ。
「って、いた、いた、いた!! ご、ごめんなさい!!」
「まったく、どうして私があんな脳筋と結婚しなきゃいけないのよ・・・・まあ、ジジ様が私を想っての事なのだろうけど・・・」
ん?
「それでは、これよりディルフィダース・プラハロンド王より、ロドエル殿下への王太子即位宣言を行っていただきます」
進行役の声で式典は滞りなく進んでいる。
式台の上では王様とロドエル殿下がたぶん教会の司祭様から洗礼を受けていたり、小難しい事を続けている。
姫様や王族の方々はその傍で事の成り行きを見守り、さらにその周辺に近隣諸国でもプラハロンド王国との繋がりが大きい国々の代表が並び、式の成り行きを見守っている。
姫様に聞いたところ、各国の殆どは外交官や宰相クラスもしくは王族と言っても各国の公爵家が列席しているようで、グリアノール帝国の様に王族、皇族の方が列席しているのは珍しいみたいだ。
「・・・これより、ロドエル・プラハロンドは王を継ぐ身として太子の名を与え、それに恥じぬよう、プラハの誇りとして生きる事をこの場にて誓います」
おお、こうして見るとロドエル殿下も一応は王族らしく見えるね。
ただ、ちょっと膝が震えているのは見逃しませんけどね。
「これにて即位の令は終了いたしました。この後は列席していただきました方々に感謝の気持ちを込め、心ばかりの宴を催させていただきますので是非ともご参加下さい」
はぁ、ようやく終わったみたい。
だいたい姫様のエスコートだからと言って、見知らぬ女の子が王族と一緒に列席していること自体おかしな話なのだけど、これでようやく開放されるよ。
「さあ、ノールちゃんこれから美味しい食べ物や飲み物がいっぱい出るから沢山食べてね」
「え? この後もあるのですか?」
「あら、聞いてなかった? パーティーをするのよ?
「それは聞いていますけど、それにも僕が出て良いのですか?」
「何を今更、私のエスコート役としてちゃんと登録してあるから大丈夫よ。それにお兄様と会うつもりもないし、こんな要人ばかりの催しに私一人でいたくないもの」
僕だっていたくないですよ。
「だからお願い!」
はあ、まあここまで居たのだから今更だけど、それに姫様の安全を考えれば仕方ないか。
「分かりました。お供いたします」
「良かったぁ~、じゃあジジ様を紹介するね」
「はい? ジジ様?」
「あ、ごめん分かりにくかったね。えっと先程話したグリアノール帝国の先代皇帝、ドレイル様よ」
「ちょ、ちょっと待って下さい! ただの平民の女の子が帝国の先代皇帝を紹介されても困ります!」
「どうして? ガランとは会っているじゃない」
「それはそうですけど」
「馬鹿だけど、あれでも皇太子なのだから、そのガランがノールちゃんを認めているのだから問題ないわよ」
良いのだろうか?
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