第6話 攻略対象 メンヘラ(桜花 雨衣)
俺に自由は無い。いや、幼馴染達が自由をくれないんだ。
本当なら今頃、友達とカラオケ行ってゲーセンに行って、合コンに行って彼女を作る。
そんな楽園みたいな人生が待っていただろう。
しかし、俺の腕にぴったりとくっついて離れない自称彼女の一人、日南彩葉。
通称ヤンデレ。
こいつは強敵だ。俺の為なら何でもする奴だから下手に刺激を与えれば何を
まだ幼馴染の誰にもバレてはいないと思うが、ヤンデレの彩葉だけには絶対にバレてはいけない気がする。
もしも俺と詩が仲良く会話してる所を見たら……。
「みっ君、どうしたの?」
「あ、いや! が、学校楽しみだなぁと思って」
「ふふふ。私も楽しみだよ! みっ君が居るからね♡」
出たー! こいつ語尾に♡付けたぞ! ♡を!!
彩葉は俺の腕にしがみ付いたまま、上目遣いで見つめてきた。
そんなに可愛く見せても俺には本命が!
一応好感度を確認っと……。
は?
俺の見間違いだろうか。
好感度ゲージがMAXな上に何故か赤く点滅していた。
好感度ゲージの下には⚠のマークが表示されている。
おかしいだろ! これ!!
「あ……」
「どうしたの? 兄ぃ」
「な、何か急に腹が痛くなって来たからショ○ベ○行ってくる!」
「え? それなら私も!」
「あー、良い! だ、大丈夫だ! それに男子トイレなんかに女子は入れないだろ?」
「確かに、それは悪いよね。みっ君だけなら良いけど他の男子に悪いもんね!」
ちげぇよ!!!
女子が男子トイレに入るとか普通有り得んからな!
後、俺にも気遣えよ!!
「じゃあ、彩葉。玲夢の事は頼んだ」
「はーい♡まっかせて! みっ君と私の大切な妹さんだもん! だから安心してショ○べ○に行ってきてね♡」
「お、おぅ……」
女子がショ○ベ○とか言うなよ!!!
何かツッコミもそろそろ疲れてきた。
俺は彩葉に玲夢の事を任せ校門をくぐり学校の中へと入った。
「……湊君?」
悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい!!!
折角、詩が目の前に居たのに!!
挨拶出来たのに!!
俺はトイレから出るとポケットから一枚のハンカチを取り出し手を拭く。
イライラが顔に出ている所為か、他の女子生徒達から避けられていた。
今日は玲夢の入学式だってのに最悪な朝だ。そして教室に向かう途中の渡り廊下で誰かとぶつかってしまった。
ドンッ!
「ぅっ……」
「いてっ。ご、ごめっ! …え?」
「みぃ君痛いよ……」
よし、もう一回トイレに入ろう。
そう思い俺が踵を返そうとしたら…。
「うおっ!」
いきなり制服の裾を引っ張られバランスを崩した。しかもこの体制はいかんだろ!!
俺は一人の女子に馬乗りになっていた。
「やっと捕まえた♡あのね、私……みぃ君が足りないの。寂しくて寂しく昨日の夜、リ○カもしたんだよ? ほら、この包帯見て?」
そう言って彼女は右手首にぐるぐる巻いている白い包帯を解こうとした。
「わ、分かったから! 包帯! 包帯はそのままでお願いします!!」
「そっか! みぃ君は包帯を巻いている私の事が大好きだもんね♡それに他の三人はみぃ君のただの幼馴染。みぃ君の彼女は私だけだよね!」
「だから俺はお前等とは付き合…」
「私はみぃ君の彼女だよね?」
「うっ……」
俺が誰とも付き合っていないとハッキリ言ってやろうと思ったら、それを確認するかのように言ってきた。
彼女の名前は、
左目は眼帯で見えないが、赤と青が煌めくオッドアイ。
右手首は白の包帯でぐるぐるに巻いている。そして彼女は見た目は厨二病だ。
因みに雨衣はあの幼馴染達の中でタイプ分けをするならば、メンヘラタイプだろう。
メンヘラ自称彼女と名付けよう。
四人のタイプに名付け終わると、俺は心がスッキリした。
これで名付け親である俺は満足だ。
……って満足してんじゃねーよ! 俺!
まだ幼馴染達の攻略が終わってねーよ!!!
自分で自分にツッコミ攻略対象の好感度を一応確認しておく。
するといきなり50?
え、何でだ?!
え? え? これもしかしたらいけるんじゃね?
何と嬉しい事に、他の幼馴染の三人とは違い雨衣の好感度がいきなり半分も減っていた。
もしかすると、もしかしなくても?
案外、メンヘラタイプの方が攻略簡単だったりするんじゃね?
メンヘラとは自分中心に動いていて、自分が欲求を満たすまでは満足出来ないらしい。
そしてメンヘラに好かれると大変なのが、
言葉選びだ!!
こう言うタイプの人に間違ってもうざいとか、近付くなとか言ってしまえば直ぐ自分の身体を傷付けようとしたり、ぶつぶつとネガティブ発言をして来て本当に面倒だ!!
玲夢はメンヘラも攻略が難しいとか言っていたが、好感度が50なら大した事もなさそうだ!
よし、いけるぞ!!
玲夢、悪いな。兄ちゃんは先にメンヘラから攻略させてもらう!
「みぃ君?」
「あ、ごめん! えーっと何だっけ?」
「聞いてなかったの?」
「いや、あの……」
「そうだよね。どうせ私の話なんてつまんないだろうし、どうせ私と居るよりも他の三人と話した方が良いだろうし、どうせ—―」
「あー! わ、分かったから! 雨衣と話すの楽しいなー!」
俺は何とか笑顔を装い、今にもリ○カしそうな雨衣の手を握った。
だが、それがいけなかった。
「嬉しい♡みぃ君はやっぱり優しいね! 手を握ってくれるなんて……。私を必要としてくれている証拠だね♡」
好感度ゲージMAX!!
全回復だと!!
え、俺……攻略間違えた?
入学式が始まるまで残り30分。
攻略失敗……。
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