第10話 修羅場
「えーっと……。この人達って湊君の幼馴染達だよね?」
「あ……えーっと……」
やばいやばいやばい!!!
こんな所を見られたら詩に誤解されてしまうじゃないか!!
「もしかして、みっ君のストーカーですかぁ? そういうのうざいから止めて貰えます?」
何を言い出すのかと思いきや、突然彩葉が詩の目の前に行き彼女を追い返す行動に出た。
ストーカーなのはお前達の方だろ!
好感度ゲージはMAXのままだが、いきなり俺が怒鳴った所で簡単に好感度が下がったりはしない。
ヤンデレシミュレーションを思い出すんだ! あまり刺激してはいけないと俺の直感がそう告げている。
「あれ? 何も言い返せなくて黙ってるんですかぁ?」
おいっ!!
俺の彼女候補にそれ以上言うんじゃね〜〜〜!!
「はぁ……」
詩が溜め息をついたぞ?
もしかしてこの状況を見て飽きられちゃったのか!?
「うざいのは貴方達の方じゃない?」
「なっ!」
詩? 何か様子が……。
「見て分からない? 湊君が迷惑してる事。自称彼女も程々にしないと本当に嫌われちゃうよ?」
詩は右拳で口元に当て、くすっと笑った。
あれは彩葉と同じ仕草の一つだ!
「自称彼女? それは貴方の方でしょ? 私は正真正銘、みっ君の彼女よ!」
彩葉が詩に負けないと言うように、右手を胸に当てながら言い返す。すると他の三人も自分が彼女とか言い始めた。
「勝手に盛り上がってるとこ悪いけど、湊の彼女は私。これだけは誰にも譲れない」
「何言ってるの? くーちゃんは私の彼氏だよ! だってくーちゃんの彼女は私だもん!」
「違う! みぃ君は私の彼氏!」
「ちょっと! みっ君の彼女は私って言ってるじゃん!」
「「「「私が彼女だよ!!!!」」」」
この四人の幼馴染達と詩が俺の事で言い争って居ると、駅の中を行き交う人達が白い目で俺の事を見ていた。
考えてもみればこの状況を見て何も思わない筈は無いだろう。
多分、修羅場として認識している筈だ。
「皆、場所移動しようか?」
◇
駅から少し離れた場所、俺達の高校の裏にある公園に俺は全員を連れて行く。
険悪なムードが漂う中、俺は皆の中心に立っている。
幼馴染達VS詩の言い争いはまだ続いてるようだ。
「みっ君はね昔、私と結婚してくれるって言ってくれたのよ?」
いつの話だよ、それ!!
「それなら私だって言えるけど。私は湊君と連絡先交換してる仲だよ?」
詩まで何でこいつ等に対抗してるんだ!?
「私も私も! くーちゃんにLINEを毎日送ってるよ! 返信来ないけど」
それはお前等のアカウントをブロックしてるからだよ! てか每日は送り過ぎだろ!!
「私はみぃ君に電話したら、『お掛けになった電話は現在使われておりません』と言うアナウンスが掛かったよ」
それは、電話番号を変えたからな!!
「わ、私は湊から誕生日プレゼントを貰ってるわよ?」
プレゼントなんていつお前にあげたんだよ!?
「兎に角、湊君は貴方達四人に迷惑してるの。これ以上付き纏うのなら校長先生に報告するけど? 退学にしてもらって、もう二度と湊君と楽しい高校生活が送れなくても良いの?」
「「「「!!?」」」」
詩の言った言葉が効いたのか、四人の好感度ゲージがそれぞれ半分ぐらいまで減っていた。
こんなの有り?
「ほら、今のうち」
四人は詩に言われた言葉でずっと硬直している。そして、俺と詩は四人に気付かれる前に急いで駅へと戻って行った。
駅へ戻るとさっきよりも人が減っていて、並ばずに切符を購入する事が出来、改札を通って二人で電車に乗り込んだ。
そこから次の駅まで10分も掛からずに着き、電車から降りた瞬間俺達は笑みがこぼれた。
「はぁ……。さっきは少し怖かったけど言いたい事を言えたらスッキリしたよ!」
「あの四人にあそこまでハッキリ言えるのは詩ぐらいかもな」
「何かごめんね! 湊君の大切な幼馴染達なのに私みたいな部外者が出しゃばった事しちゃって」
「いや、あいつ等にはいつかハッキリ言ってやるつもりだったから、あれぐらいが丁度良い」
それに詩のお陰もあってなのか、俺への好感度がかなり下がって愕然とした。
これであいつ等が素直に大人しくなってくれたら良いのだけど、好感度0にするにはまだ程遠い。
電車からバスに乗り換えイ○ンモールに着いた俺達はエレベーターで二階に上がり、映画館の中へと入って行く。
何を観るかはまだ決めていないが、これってデートなのでは?
だって男女が二人で出掛けるとなればデート以外何も無い!!
詩と俺は自動券売機の前で立ち止まり、何の映画を観ようか考え中。
俺はアクション映画が良いけど、詩はラブロマンスを選ぶだろう。
横を見れば詩が顎に手を当て、真剣に自動券売機の画面を見つめながら眉間に皺を寄せていた。
「よし、アクション映画観ようか」
「え? アクション映画?」
「あ、もしかしてアクション映画嫌いだった?」
「いや、めっちゃ好きだけど詩はそれで良いのか?」
「うん。私の従姉妹がアクション映画が好きで良く観に来てたの。それで私もハマっちゃって!」
「な、成程……」
意外だった。女の子なら絶対ラブロマンスを選ぶと思って、アクション映画はまた次にしようと思っていたらまさかのアクション映画が好きだったとは。
詩は鼻歌を口ずさみながら機械の操作をしていた。
そして取り出し口から切符を二枚取ると、その一枚を俺に渡してくれた。
「ありがと」
「うん! 上映までまだ時間が1時間あるから先にフードコートでご飯食べない?」
「そうだな。お腹も空いて来たし…っ!」
「どうしたの?」
「あ、いや……ちょっとトイレ!」
「え? 湊君?」
俺は詩から離れると一旦外に出た。
トイレと言うのは嘘だ。
何故なら今、好感度ゲージが半分になった……。
「やっと追い付いた♡」
俺のストーカーかよ!!
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