「板野かも擬態杯」関連

板野の紹介&レベル別「板野っぽさ」擬態法

 このたび、南雲皋氏のご厚意により、本庄照氏に続いて板野の擬態杯をご開催頂く運びとなりました。

 とはいえ、特に「小説家になろう」方面からいらした方には、「板野なんて知らん! どこのベニヤ野郎だ!」という向きも多いかと思いますので、板野自身の概要と、擬態レベルごとのポイントを簡単にまとめておきます。



【そもそも「板野かも」とは】

・2017年1月から2020年1月までカクヨムで活動していたWEB小説作者です。「中の人」はラノベ以外の畑出身の商業作家であり、「板野かも」はWEB用に作った別名義です。この名義で芸能記事の執筆なども行っていました。

・上記の旧カクヨムアカウント時代には、アイドル物、特撮風ヒーロー物を中心に多数の長編作品を公開する傍ら、「カクヨムヒロイン総選挙」などユーザー参加型イベントを多く主催し、特にカクヨム最大の自主イベントとされた旧「匿名短編コンテスト」(匿名コン)はその後の匿名系イベントの基礎となりました。

・↑この通り自画自賛を臆面もなく行いますが、一方では作中・作外で自分自身を「あのベニヤ野郎」「単細胞アイドルバカ」「時代に取り残された作家崩れ」などと積極的にこき下ろしてネタにする傾向があります。

・一度はカクヨムを退会し皆様の前から姿を消していましたが、2021年10月に過去の作品の再掲載のため再登録。以降、新「匿名短編コンテスト」などの自主イベントを再び開催していますが、自分自身の「けじめ」として、イベント参加以外でこの名義での創作活動(未完作の続きや新作の執筆など)は一切行っていません。WEB小説作者としては「隠居」の立場にあるという建前です。

・性別年代不詳。また、かつては「板野」の読みは「イタノ」でも「バンノ」でも可としており、現行のアカウント名にも「itano or banno」などとありますが、専ら「イタノ」としか呼ばれる機会がないため、現在は「イタノ」と確定的に名乗っています。「かも」も本来は「イタノしれないしバンノしれない」の「かも」だったのですが、普通に鳥の鴨を絡めてネタにすることもあります。



【擬態レベル1:題材を寄せる】

・板野が積極的に用いる題材として、「女性アイドル」「特撮風変身ヒーロー」「法律・弁護士・刑事司法」「旧日本海軍」「作家業」「将棋」などがあります。これらの内、1~2つの題材を起用するだけで、まずは十分「板野っぽく」なるでしょう。


〈アイドルについて〉

・アイドルについては、現実の日本の女性アイドルグループをモチーフとすることが多く、特にAKB48系列や坂道シリーズから題材を取ることが頻繁にあります。ただし、そうした大規模グループの話はどちらかといえば長編向きのテーマであり、短編一作限りであれば小規模事務所やインディーズアイドルの方が話が作りやすいかもしれません。

・男性アイドル、韓国資本のアイドルは専門外のため、板野が書くことはまずないと思います。アイドルマスターやラブライブ等の「アイドル物の二次元作品」を題材とすることもほぼありません。

・作品で取り上げるアイドルのライフステージは、志望段階から、オーディション、現役活動時、卒業、その後の人生まで全般にわたります。老後・死後を描くことも珍しくありません。

・板野の価値観として「アイドルは恋愛禁止を少なくとも建前とするべき」という信念があり、現役アイドルの恋愛を描くとしても「本来は禁止なのに」という葛藤が必ず話のフックになります。現役アイドルが何の葛藤もなく恋愛する話は「板野っぽく」ありません。

・その一方で、枕営業やスキャンダルなどのドロドロした方面に容赦なく踏み込むこともあり、華やかなアイドル業の裏側をシニカルにえぐるような作風はそれはそれで「板野っぽい」といえます。


《参考作品(短編のみ)》

・『48million外伝 ~永遠のアイドル~』

https://kakuyomu.jp/works/16816700428482664020/episodes/16816700428482866999

・『雪国のアイドル』

https://kakuyomu.jp/works/16816700428484297111/episodes/16816700428484441031

・『平政30年(は)第108号 殺人未遂,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件』(「落ち込め!メンヘラ短編コンテスト」参加作)

https://kakuyomu.jp/works/16816700428555431158/episodes/16816700428555515666

・『アキバ系ヒューマノイド アイドライザーMK-8』(「匿名短編バトル きみのロボット編」参加作)

https://kakuyomu.jp/works/16816700428555431158/episodes/16816700428555543052

・『ヘビーローテーション0048』(「第5回 匿名短編コンテスト・過去VS未来編」参加作)

https://kakuyomu.jp/works/16816700428555431158/episodes/16816700428556019853

・『青春のアイドル』(「新匿名短編コンテスト・再会編」参加作)

https://kakuyomu.jp/works/16816927862378848244/episodes/16817139555019216041

・『ハッピーエンドは自らの手で』(同上)

https://kakuyomu.jp/works/16816927862378848244/episodes/16817139555142584910

・『「見せたくない」は恋の始まり』(「匿名キャラお見合い企画」参加作)

https://kakuyomu.jp/works/16818093085133939965/episodes/16818093085946350591

・あるアイドルの穏やかな死』(同上)

https://kakuyomu.jp/works/16818093085133939965/episodes/16818093086489342353


《参考作品(架空レビュー)》

 いずれも「架空の作品のレビュー」ですが、即ち「板野が思いつきそうなアイドル物」ということです。

・重苦しい感情描写で突きつけるドルオタの存在理由

https://kakuyomu.jp/works/16817330650759210427/episodes/16817330650870578499

・アイドルパワーで国土防衛!? 可憐な勇姿にイイネが止まらない!

https://kakuyomu.jp/works/16817330650759210427/episodes/16817330651103347719

・「戦うアイドル」ここにあり(早く続きを……!)

https://kakuyomu.jp/works/16817330650759210427/episodes/16817330651103415886



【擬態レベル2:ゲストキャラを出す】

・匿名イベントにおける板野の特徴的な振る舞いの一つとして、「自身の既存作のキャラクターをパロディやセルフ二次創作(※匿名なので「セルフ」と判明するのは終了後)として出演させる」というものがあります。これは後のレベルで解説する「主催者の責務」の一環でもあるので、他の方のイベントにお邪魔する際にはまず行いませんが、今回は板野擬態杯ということで南雲氏の賛同も頂いているため、これを積極的に行えば「板野っぽさ」が増すでしょう。

・とはいえ、板野の既存作に馴染みのない方に、今回のためだけに長編を読んでキャラを把握してくださいというのはあまりに酷な話。幸い、匿名イベントで出した短編が沢山あるので、ゲストキャラはそこから見繕うことをお勧めします。

・板野主催「匿名キャラお見合い企画」に書き手として参加されていた方は、同イベントのキャラクターリストから板野の作成キャラクターを起用するのが最も簡単でしょう。

・板野は元より自作について二次創作オールフリーの立場を取っているので、起用にあたり事前の相談は一切不要です。


《関連リンク》

・匿名短編コンテスト@wiki 板野かもの作品目録

https://w.atwiki.jp/tokumeicon/pages/14.html

・板野かも 匿名短編企画エントリー作品集

https://kakuyomu.jp/works/16816700428555431158

・匿名キャラお見合い企画

https://kakuyomu.jp/works/16818093085133939965


《参考作品》

・『匿名コンをぶちのめせ! ~白き狼と二人の式部~』(「ミニ匿名コン・主催者の苦悩編」参加作)

https://kakuyomu.jp/works/16818093084362861078/episodes/16818093084409448018



【擬態レベル3:形式を寄せる】

・文体の模倣まで行かなくとも、ひとまず表面的な形式を踏襲するだけで「板野っぽさ」を上げる――というか、「板野っぽくなさ」を出さないようにすることができます。

・基本的なことですが、板野は「行頭の字下げ」「三点リーダ(……)やダッシュ(――)は二つ繋げる」「感嘆符(!)や疑問符(?)の後に空白を置く」などの正書法を非常に厳格に守ります。これは「そうするのが正しい」というより「そうした方が得をする」という考えに基づきますが、ともあれ、行頭の字下げを行わなかったり、三点リーダのかわりに「・・・」を用いているような文章はまず板野の書いたものではありません。ただし、何らかの表現意図をもって「わざと」そうした文章を書くことはあります(小説以外の文章形式のパスティーシュ、「稚拙な文章」を敢えて再現する場合など)。

・一方で、WEB小説の一般的な作法である「台詞前後の空行挿入」については柔軟に行います。これも「そうした方が得をする」という考えに基づき、WEBの読者にとっての「読みやすさ」を優先しています。

・三点リーダやダッシュについては、偶数個であれば四つ以上の使用を可とする立場もありますが、板野はほぼ二つしか使いません。

・傍点やルビの指定については、投稿先のサイトの記法に合わせるのがマナーだと考えているため、カクヨムではカクヨム記法を必ず使用します。特に傍点は、なろうで用いられる| 《・》 ←このように振る形式ではなく、《《 》》で囲むカクヨム記法を必ず用います。これに関しては表現意図による例外はまずありません。

・人名にルビを振る場合、「|板野宅郎《いたの たくろう》」のように名字と名前に一括で振ることはまずなく、「|板野《いたの》|宅郎《たくろう》」のように名字と名前のそれぞれに分けて振ります(その方が表示がキレイなので)。一方、「|板《いた》|野《の》」のように1文字単位で振るまでは基本的にしません(そうすれば更に表示がキレイになるかもしれませんが、そこまでする作業コストには見合わないという感覚です)。

・場面転換などの区切りには、既存作(匿名イベント以外の作品)では「◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆」を用いることが多くありましたが、匿名イベントでは匿名性の担保のため、「* * *」や「◆ ◆ ◆」など他の記号を柔軟に用いています。作品内容に応じたユニークな記号(音楽の話なら音符、など)を用いるのもいいでしょう。字数を消耗したくない場合は単に空行を複数行置くのみで済ませることもありますが、今回は後のレベルで解説する「ルビ芸」も容認される空気があるため、「| 《* * * * * 》」のように空白の上にルビを乗せて文字数をちょろまかす選択肢もあります。いずれにせよ、区切りについては、概ねどのような形でも「板野っぽさ」の有無にはあまり影響しないといえます。


《関連リンク》

・『「三点リーダの使い方」や「行頭の字下げ」を守らねばならない、ただ一つの理由』

https://kakuyomu.jp/works/16816700428484297111/episodes/16816700428484728773



【擬態レベル4:作風を寄せる】

・ここまでの内容に加えて、以下の作風のいくつかを意識すれば、かなり「匿名イベントにおける板野っぽく」なるでしょう。


〈話の雰囲気〉

・板野はシリアスからコメディまで何でも書きますが、一人一作限定の匿名イベントの場合、どちらかといえば「明るく」「楽しく」「読みやすく」「キャラクターが印象に残りやすい」作品を送り込む傾向があります。切ない話や哀しい話を書かない訳ではありませんが、暗鬱とした空気を払拭しないまま終わるような作品は「板野っぽく」ありません。


《参考作品》

・『天帝の顔もN度まで ―ドジっ子アイドル爆誕秘話―』(「ミケ猫さんを超えてゆけ杯」参加作)

https://kakuyomu.jp/works/16816700428555431158/episodes/16818093085517306931

・『敵機に帽子を振れ』(「匿名短文おバカ上司企画」参加作)

https://kakuyomu.jp/works/16816700428555431158/episodes/16818093087096834392


〈起承転結〉

・どんなに短い字数であっても、起承転結のハッキリした話、「動き」がある話、ちゃんとオチがつく話を好む傾向があります(ここでいう「オチ」とはお笑い用語のことではなく、事態の解決や関係性の進展、未来への期待など)。今回は字数制限が2,000字と特に短いので、必ずしも具体的な場面転換を含む必要はないと思いますが、一つの舞台で少数の登場人物が話しているだけであっても、「転」となる時点があり「話が動いた」「オチがついた」と思わせて締めるのが「板野っぽい」作品といえます。2,000字をかけて設定の説明だけに明け暮れ、ちょっとした心情の描写程度で終わる作品は「板野っぽく」ありません。

・手前味噌ですが、以下の作品がサンプルとして分かりやすいでしょう。いずれも僅かな字数の中に起承転結があり、主人公と相手の「この先」が示されるというオチがあります。


《参考作品》

・『引退試合』(「匿名超掌編コンテスト」参加作)

https://kakuyomu.jp/works/16816700428555431158/episodes/16818093083890794254

・『弟子入り志願』(「匿名短文元神童企画」参加作)

https://kakuyomu.jp/works/16816700428555431158/episodes/16818093084373966770


〈登場人物名〉

・登場人物名には何らかのモチーフや元ネタを織り込む傾向があります(というか、何のネタも入っていない人名をサラで考えることが非常に苦手です)。ネタの入れ方は、地名姓、モチーフのもじり、実在人物のもじり(特に実在のアイドルが元ネタの場合)など多岐にわたります。

(例)東海地方出身のアイドルに「金山チクサ」(いずれも名古屋の駅名)、白がトレードマークの弁護士に「白山白狼はくろう」、紫式部の生まれ変わりとされる女性に「式部ユカリ」、炎属性のアイドルに「火群ほむら結依ゆい」(下の名はAKBのメンバーから)など。

・複数の人物間で共通の要素や対になる要素を入れることもよくあります。

(例)上記白山弁護士の周辺人物に「青梅」「ミドリ」「赤座」など色系の名前、上記式部ユカリのライバルに清少納言由来の「少納言サヤコ」、男女のスーツアクターに「大吾」と「サヤカ」(作中作のモチーフである映画『ウルトラマンサーガ』の出演者のDAIGOと秋元才加さやかから)など。

・一方で、読者の認知リソースを無駄に侵襲しないという考えから、フルネームを設定する必要性がない場合には、名字のみ・下の名前のみの設定とすることも多くあります。こと短編においては、名前自体を設定せず「俺」「私」「少女」「先輩」などで済ませる場合も珍しくありません。


《名付けの参考》

・「匿名キャラ設定企画」キャラ解説

https://kakuyomu.jp/works/16816700428555431158/episodes/16818093085904842532


〈「主催者の責務」〉

・板野は自身の主催する匿名イベントにおいては、「ルールの範囲内での遊び方の幅」を自ら提示するべく、かなり自由度の高い作品を企画前半から(※板野の主催イベントは基本的に作品数上限なし)送り込む傾向があります。板野はこれを「主催者の責務」と称しており、下記の「ルビ芸」もその一環にあたります。今回は南雲氏の企画にお邪魔する立場ではありますが、擬態の一類型として賛同も頂いているので、少し意識してみると「板野っぽさ」が増すかもしれません。


〈ルビ芸〉

・板野は平時においてもルビの使い方でかなり遊ぶ傾向があり、こと自身が主催する匿名イベントにおいてはカクヨムのルビ機能を最大限に活用して大暴れするのが恒例となっています。

今回はこのように南雲氏の賛同もありとあらゆる箇所に頂いているのでルビを乗っけることでこの「ルビ芸」を本文とルビ部分で意図して使ってみれば並行した話を繰り広げるなどは相当「板野っぽく」なるでしょうもはや界隈では定番の所業であり、

空白や一文字の記号の上に大量のルビを乗っけることで字数上限を大胆に無視した作劇を繰り広げたりもします。

勿論知らない方のイベントにお邪魔する際にはやりませんが、 今回は南雲さんなので何でもアリでしょう。

カクヨムでは1字の上に最大50字までルビを乗せられますが、 本分の側が空白なら字数カウントにも入らないので、

2,000字の字数上限などあってないようなもの。 100万字超えの大長編だって自由に出せちゃいますね。


《参考作品》

・『2,500字後に君は死ぬ』(「新匿名短編コンテスト・再会編」参加作)

https://kakuyomu.jp/works/16816927862378848244/episodes/16816927863123880489

・上掲『匿名コンをぶちのめせ! ~白き狼と二人の式部~』


〈板野いじり〉

・これも上記「主催者の責務」の一環として、板野自ら「板野かも」という存在をネタにして弄り倒す傾向があります。作中人物に「板野かもの作品じゃあるまいし」などと発言させたり、「あのベニヤ野郎!」などと敵対感情を発露させるなどの内容が一般的です。こうした板野への言及は、いわゆる第四の壁を超えたメタネタの場合もあれば、作中世界に「板野かも」が存在している場合もあります。

・「板野」が作中で悪役になろうが、クズ主催者やヘボ作者としてこき下ろされようが、犯罪者になろうが、殺されようが、板野(本人)は全く怒りません。フリー素材と思ってどうぞご自由にお使い下さい。


《参考作品》

・『板野かも殺人事件 ――出典:フリー百科事典「Wakipedia」』(「第5回 匿名短編コンテスト・過去VS未来編」参加作)

https://kakuyomu.jp/works/16816700428555431158/episodes/16816700428556088461

・上掲『2,500字後に君は死ぬ』、『匿名コンをぶちのめせ! ~白き狼と二人の式部~』

・『自称学園一の美貌を誇る僕の先輩はこんなことばかりしているから将棋が強くならないのだ』(「ミニ匿名コン・主催者の苦悩編」参加作)

https://kakuyomu.jp/works/16818093084362861078/episodes/16818093084513159208

・『匿名コン用語集の誕生』(同上)

https://kakuyomu.jp/works/16818093084362861078/episodes/16818093084577019419


〈匿名コンネタ〉

・同じく「主催者の責務」の一環として、板野主催の匿名イベントにおいては、カクヨム黎明期の定番ミームであった「オレオ」や、過去の匿名コンで発生した独自ミームである「穴」を作中でネタにすることがあります。今回は匿名コンシリーズではないのであまり考える必要はないと思いますが、余裕があれば入れてみてもいいかもしれません。なお、「オレオ」及び「穴」については、上記『匿名コン用語集の誕生』の作中に解説があります。


《参考作品》

・『穴狙い』(「新匿名短編コンテスト・再会編」参加作)

https://kakuyomu.jp/works/16816927862378848244/episodes/16816927863356115268

・『オレオ●●●』(「第1回 匿名闇鍋バトル」参加作)

https://kakuyomu.jp/works/16817330652982673639/episodes/16817330654113357893



【擬態レベル5:文体を寄せる】

・そこまでやる必要はないと思いますが、こだわりたい方のために、「板野っぽい」文体の要点を挙げておきます。


〈人称・視点〉

・一人称、三人称のいずれもよく書きます。三人称の場合、視点は一人の人物に固定することが多く(三人称単視点)、視点人物の切り替えにあたっては必ず明確な場面転換を伴います(三人称複視点)。場面転換を伴わずに複数の人物の視点を混在させることはまずないと言ってよく、語り部視点や神視点を用いることも滅多にありません。


〈ロジカルで過不足のない情報伝達〉

・極めて自然な文章、あるいは(主に短編や長編第1話の冒頭における)詩的な文章の中で、過不足なく必要な情報を読者に伝えることを良しとしています。「説明のための説明」はほとんど書かず、いかに直接的でない表現でロジカルに情報を書き表すかを工夫します。以下の例をご覧ください。


 俺達は飛ぶ。朝焼けに染まる空を機翼つばさに映し、いだ海面に誇らしく影を引いて。

(『NAVY★IDOL ~海軍士官が現代でアイドルキャプテンを目指すようです~』第1話冒頭)


 ↑長編第1話の冒頭なので、掴みのために詩的な表現を選択していますが、この時点で、「語り手は恐らく男性であり、仲間と複数人で航空機に乗り込んで早朝の海上を飛行しており、何かしらポジティブな感情を抱いていること」が直接的な説明なしで伝わります。ここで「その朝、俺は仲間と共に攻撃機に乗り~」などと書いては台無しでしょう。

 先に挙げた参考作品より、以下の例も同様です。


 開始の合図と同時にあたしは踏み込んだ。両手に走る打ち合いの衝撃。息つく間もない攻防の中、震える空気が面金めんがね越しに肌を刺す。

(『引退試合』冒頭)


 ↑こちらも「語り手は恐らく女子であり、剣道の試合で互角以上の相手と戦っていること」が直接的な説明なしで伝わります(実はこの掌編中に「剣道」という単語は一度も出てきません)。このように、「説明のための説明」を伴うことなく読者に状況を理解させることを意識すれば、「板野っぽい」文体に近づきます。


・「ここは放課後の教室。」「今は夕方だ。」「俺の名前は板野宅郎。」のような単純すぎる説明を書くことはまずなく、最低でも「夕陽差す放課後の教室に、俺こと板野宅郎はひとり立ち尽くしていた。」くらいの表現にはします。


〈導入部での舞台等の明示〉

・上記「過不足のない情報伝達」と重なりますが、こと短編においては、冒頭数行の内に物語の舞台や登場人物を読者にハッキリ明示する書き方を好みます。匿名イベントには現代ドラマから異世界ファンタジーまで様々な作品が寄せられるので、少なくとも舞台がいつのどこなのか、シリアスなのかコメディなのか、どんな人物が出てくる話なのか、くらいは早期に確定させるように意識しています。以下に例を挙げます。


「はわわっ、ボクまた世界を滅ぼしちゃいましたっ!?」

 昔の下界のマンガみたいにチリチリになった頭髪からプスプスと煙を立ち上らせ、顔をススだらけにして半ベソで泣きついてきたのは天帝第三皇女のエレフセリア、通称エレア。

 いや、このチンチクリンが俺と同じ神族? ガッデム、冗談キツイだろ。

(『天帝の顔もN度まで ―ドジっ子アイドル爆誕秘話―』冒頭)


 ↑この3行で、天国の類を舞台にしたファンタジーであり、コメディのノリに全振りした作品であることが伝わります(厳密には、この時点では舞台が下界である可能性も排除できませんが、続く数行で天界と確定します)。勿論「ここは天上界。」のような「説明のための説明」は書きません。


「本日は羊羹ようかんの早食い競争を行う!」

 潜水艦長、三ツ倉みつくら少佐の発令を聞き、しょう航海長の俺は「またか」という溜息を無言で飲み込んだ。

 うちの艦長――帝国海軍における「艦長」は軍艦の長を指し、駆逐艦や潜水艦の長は「駆逐艦長」なり「潜水艦長」なりであるのだが――は端的に言って馬鹿である。「お」を付してと呼んでもよい。

(『敵機に帽子を振れ』冒頭 ※傍点の形式は「本庄照擬態杯」の関係で合わせたもの)


 ↑こちらも、旧日本海軍の潜水艦内の描写であること、お馬鹿な潜水艦長を中心とした軽いノリの話であることが冒頭で伝わります(この時点では舞台を明言していませんが、続く数行で艦内と確定します)。


〈専門用語による世界観の提示〉

・こと短編においては、実在のもの・架空のものを問わず、「作中における専門用語」を特段の説明を伴わず自然に並べることで、世界観に奥行きを出したり、キャラや世界の設定をふんわりと読者に伝える書き方を好みます。長編ならそれらの用語を普通に説明すればよいのですが、短編では字数の関係でそこにリソースを割くことが適切ではないため、敢えて「何も説明してないけど何となく分かる」という程度に抑えるのがポイントです。以下に例を挙げます。


「私が負けたら敬語でも何でも使ってあげる。そのかわり、アンタが負けたら、私を奨励会しょうれいかいに連れていきなさい」

 奨励会と来たか。覚えたばかりの言葉をとりあえず使ってやがるな。

「奨励会が何か知ってんのかよ」

「バカにしないで。将棋界のことは一通り調べたわ」

「じゃあ女流棋士ってのは知ってるか? バカ正直に男に混じって棋士なんか目指さなくても、お前くらいの棋力があればすぐなれるぜ」

 俺が本心から言うと、少女の駒音が一段と激しくなった。

「女流なんか眼中にない。私は女で最初の名人になるのよ」

(『弟子入り志願』)


 ↑実在の用語を並べた例。読者に将棋界の予備知識がなくても、「棋士を目指すための場として奨励会があるが、子供単独では入会手続ができないこと」や、「女性には棋士とは別に女流棋士という枠があるが、その平均的な棋力は棋士に遠く及ばないこと」、そして少女がそれらの情報を認識していることが自然に把握できます。


「ちっ、とりあえずセーブポイントを辿って復元するか……」

 俺はエレアに滅ぼされた可哀想な世界を一瞥いちべつすると、天界サーバーの大容量記憶装置アカシックレコードから引き出したバックアップデータを慎重に上書きする。

(『天帝の顔もN度まで ―ドジっ子アイドル爆誕秘話―』)


 ↑こちらは架空の用語を並べた例。全体的にコメディタッチの作風であることも相まって、本作における下界管理の仕組みが妙にITじみていることが伝わり、そのこと自体がまた「ツッコミ所」となっています。


〈自然な台詞運び〉

・ここまでの内容と関連しますが、不自然な説明口調の台詞を書くことはまずありません。不自然な説明口調とは、例えば上記『弟子入り志願』の会話を例にとれば、


「じゃあ女流棋士ってのは知ってるか? 棋士とは別に女だけがなれるプロの将棋指しの枠だ。バカ正直に奨励会で男に混じって棋士なんか目指さなくても、女流棋士なら奨励会の下部組織の研修会でB1以上に上がればなれるんだからよ、お前くらいの棋力があればすぐだぜ」

「女流なんかレベルが低すぎて眼中にない。私は棋士の最高の名誉である名人に女で最初になるのよ」


 ……というような台詞のことです。お互い将棋界のことを知っている者同士でこんな持って回った会話になるはずがありませんよね。こうした「説明のための説明」を登場人物の台詞に託すことはありません。

・ただし、主に地の文なしの会話劇において、過剰な説明口調の台詞をギャグとして書くことはあります。


「ちょっと、先輩。LINE見ましたけど、何ですか、あの句は」

「何よ、部室に来るなりご挨拶ね。学園一の美貌を誇るこのあたしと言葉を交わせることをまず喜びなさいよ」

「はいはい、セリフだけで状況とキャラ設定を読者に伝える板野流無人称小説術の実践はいいですから」

(『短編や 欠けたオレオと 削る文字』 )


 ↑この場合、二人の関係性と「先輩」のキャラクター性を台詞で伝えているのですが、そのこと自体を「板野流無人称小説術の実践」と称してネタにしています。


〈その他の文章形式〉

・ここまでの話からは離れますが、板野は主に自身が主催する匿名イベントにおいて、作風に幅を持たせる一環として、一般的な小説の形式と異なる文章形式の作品(地の文なしの会話劇、掲示板形式、裁判の判決文のパスティーシュなど)を積極的に送り込む傾向があります。一人一作かつ他の方のイベントにお邪魔する際にはあまり行いませんが、今回は南雲氏公認の擬態杯ということで、「板野っぽさ」の一類型として試してみてもいいかもしれません。


《参考作品》

・上掲『平政30年(は)第108号 殺人未遂,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件』、『板野かも殺人事件 ――出典:フリー百科事典「Wakipedia」』

・『光る太郎、アニメ最新話で遂に義理の母ともファックしてしまうwwwwww』(「第4回匿名短編コンテスト 光VS闇編」参加作)

https://kakuyomu.jp/works/16816700428555431158/episodes/16816700428555894753

・『短編や 欠けたオレオと 削る文字』(「新匿名短編コンテスト・四季の宴」参加作)

https://kakuyomu.jp/works/16817139556846164332/episodes/16817139557018508016

・『グレゴリオ暦2033年10月11日付 榊 雪彦 の死亡予定に関する対応報告書』(「匿名キャラお見合い企画」参加作)

https://kakuyomu.jp/works/16818093085133939965/episodes/16818093086432172872



 以上、皆さんも楽しい板野擬態ライフを!

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板野かも 匿名短編企画エントリー作品集 板野かも @itano_or_banno

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