【No.004★】匿名コンをぶちのめせ! ~白き狼と二人の式部~
真っ白なスーツがトレードマークの弁護士である
「ちょっと待ってもらおう。誰だ、さっきからおかしな地の文を綴っているのは」
白山はそう言った。ちなみに白山白狼とゆうのは板野かもの小説に登場する登場人物でありブラック企業のせん滅を誓っているホワイトウルフと呼ばれる弁護士なのだった。
「一応、俺のことを知ってはいるようだな……。それならせめて、この真っ白な空間と俺の
白山は言った。すると白い空間の奥から今度は紫色の着物を着た長い黒髪が目立つ若い美人女性がすっと歩み出てきて言った。
「あら? お久しぶりですわね、白山先生」
「
この式部ユカリという女性は紫式部の生まれ変わりとされていてその力で駄作から生まれる魔物を退治する駄作バスターとして知られている女性だった。ちなみに白山が言った「YOU'RE MY WIND」と「スーパー板野大戦」というのは板野かもがかなり前に主催するイベントのために書いた小説でアイドライズの結依と電脳歌姫の美音も出演して4つの作品のクロスオーバーになっているやつだった。
「そうでしたわね。わたしは一応、新匿名コン『始まり編』にもゲスト出演していたのだけれど……」
「ふむ、『2500字後に君は死ぬ』か。あのベニヤ野郎の暴れぶりは読ませてもらった。ところで先程から――」
ユカリが言ったゲスト出演というのは板野かもが新匿名コンの始まり編で書いた作品の中でインチキルビ空間で呼び出されるキャラとしてゲスト出演していたやつのことで白山もそれを読んでいたというメタ発言をしたのだった。
「――先程から、ブラック経営者の自分語りレターの駄文にも劣る噴飯物の地の文がやたらと鬱陶しいのだが……。キミの領分の事案じゃないのか、これは」
「ええ、まあ、そうですわね……。ちょっと、あなた?」
そこでユカリは急に自分の傍らの少年に声をかけた。いつの間にかユカリの隣には中学生くらいの少年の姿があってそれは彼女が弟子にしている小説家志望のペンネームはキラーKという中二病男子だった。
「あなたの仕業じゃないでしょうね? これ」
「いや、ユカリさん。いくら僕でもここまで酷い文章は書きませんって」
「まあ、それもそうね……。そうなると……」
ユカリが何かに気が付いたように人差し指を自分の口元に当てた。白山は「何か?」と言いキラーK少年も首をかしげた。
「そちらのお弟子さんの仕業かしら?
ユカリが流し目を向けた先にはなんとユカリと瓜二つの紫の着物を着て黒髪のロングヘアが特徴の若い女性がいつの間にかスウッと現れていた。彼女は名前は
「えぇー? お姉さん心外だなぁ。ウチの子だって最近はここまでお粗末じゃなくなってきたんだよ?」
ふふっと可愛く微笑んだ紫子の外見は本当に式部ユカリと瓜二つであり白山とキラーKもびっくりしてその2人を見ている。どうして別の作品のキャラ同士がこんなに似ているのかというと板野かもが前にTwitterで言っていたことがあるのだが実は
「ちょっとちょっとぉ、地の文を書いてるキミ。さらっと板野先生がカクヨムで公にしてないネタバレをこんなところで出しちゃダメだよ?」
「まあ、いいんじゃないかしら? どの道、あの作者が続きを書くことはもうないのだし。ねえ白山先生?」
「ふむ、とうに時効が成立していると言えるだろうな」
「えっ、何ですかユカリさん? えっと、
つまりこの2人が似たようなキャラになっているのは板野がわざと
「みなまで言うな、だよ、地の文のキミ。それならわたしの口から言わせてよ? 『駄作バスター ユカリ』は、愛しのお姉さんのわたしが成仏しちゃった後、物書きとして奮起したライトが、このわたしの面影を思って書いた作品って繋がり方になる予定だったって」
「つまりこちらは、あなた達のお話の作中作にされるところだったのよね。作品としてはわたしの方がだいぶ先輩なのだけれど……」
今紫子が言ったライトというのは彼女が出てくるノベルバトラーライトとゆう作品の主人公でその時点ではちょうどこんな風なヘタクソな文章を書くことしかできない中学生男子なのだった。そのライトという少年を天才作家の幽霊である紫子がヒカルの碁の藤原佐為みたいに小説の教育をしていって最後はやっぱり佐為みたいに消えてしまうがライトは奮起して紫子をモチーフにした小説を自力で書いて作家になるというのがその作品のラストシーンとして考えられていたのだと前に板野がXと呼ばれていなかった頃のTwitterで言っていた。ちなみに作者は佐為を女だと思っていたことがありますが、皆もあるあるですよね?
「そぉれぇはぁ、とーもーかーくー。ちょっとライトぉ? どーせライトがこの地の文書いてるんでしょ? 隠れてないで出てきなよー」
紫子が呼びかけるが答えるものはいな
「焦れったいですわね。オン・アラハシャノウ・ソワカ!」
ユカリの手元にいきなり出現した身長ほどもある巨大な大筆を彼女は一閃させ白い空間を墨で切り裂いた
う……っ
「駄作バスター、式部ユカリ。無知の闇を祓う文芸の番人にして、あちらとこちらの世界を繋ぐ
「ライトー、大丈夫ー? そんなあからさまに
うわ何だこれ……紫子センセが2人……?
まあ幽霊だもんな、分身くらいするか……
ああそうだ、そんなことよりオレは……本文を書かないと……
「異議あり!」
突然白山の声が空間に響いた。
「あれ、ユカリさん、本物の弁護士はあんなこと言わないんじゃ……」
「白山先生もたまにははっちゃけたいんでしょう」
「ゴホン。――そんなことより、
「おっ、気付いちゃった? 流石だねー、弁護士ホワイトウルフさん」
幽霊こと紫子センセが意味ありげな流し目をオレに向けてくる。白山は続けて言った。
「彼女は先程、『ウチの子だって最近はここまでお粗末じゃなくなってきた』と言った。にも関わらず、今度はこのお粗末な地の文の主をライト少年とあっさり特定している。そう、彼女は気付いているのだ――地の文の主ことライト君は、自由意志によって本文を書いているのではない、ということに」
白山はそう言ってオレを、いや、オレの背後の闇を指さしてきた。
「今こそ主犯者を白日のもとに暴き出すとしよう。ライト少年を洗脳し、執筆労働に従事させていた闇の
白山がその名前を言った瞬間オレは闇から解放され――
「……あれ? オレ、今まで何して……」
「わー、ライト、無事でよかったぁ。お姉さん心配したんだぞー?」
「ちょっ、すり抜けるからって抱きつくなって! ってか、そっちのよく似たヒトは結局誰?」
「あなたが将来書くかもしれなかった物語の登場人物……とでも言っておきますわ」
「オレがアンタの話を? なんで?」
「そ、そんなことよりユカリさんっ。ライト君のかわりに、あのベニヤ野郎が……!」
一同が視線を向けたその先。宙空に渦巻く漆黒の
「板野先生、もう地の文はいいですわ。楽になさって」
それはさながら煉獄の業火に囚われた亡者
「おーい、アンタ。もういいってさ」
「そんなことより、聞かせてもらおうか。この少年を手駒にし、俺達を巻き込んでまで、一体何を企んでいたのか」
……白状するしかなさそうだな
私はもう疲れたんだ。主催者として「匿名コンらしい作品」を書き続けることに……
「成程な。だからゴーストライターの雇用に手を出したわけか」
流石は私の生み出したキャラクター、察しがいいな
「だが、貴兄も労基法を知らぬ訳ではなかろう。中学生に違法な――」
「白山先生、話が横道に逸れるからそれは今度にして頂けるかしら」
無論、私だって最初は真っ当な作家に書かせることを考えたさ。そう例えば、ラ・フランス先生
「ラ・フランス先生やリリーも候補に入っているのね……」
「今更だが物書きキャラが多いな……。作者のコンプレックスか?」
「同業者の話は出しやすいってだけじゃないかな?」
だが、匿名コンは非営利で、プロに頼む予算なんかない。白山白狼、ゴーストライティングで一千万もせしめていた君なら分かるだろう
「それは
「だからって、よりによってライトなんかに……」
「おい幽霊、今オレのこと『なんか』って言った!?」
「わたしに声掛けてくれたら、いつでも執筆役くらい買って出たのにー。これがほんとのゴーストライティングってね?」
……フン。それに、どうせ無駄なんだよ。主催者が頑張って『匿名コンらしさ』なんか示して盛り上げたところで。結局、PVが回るのは序盤の作品ばっかり。皆が公平に楽しめるイベントになんか出来っこないんだ
「やっと今回のお題に辿り着いたわね……」
だから、もう疲れたんだよ。不均衡の改善なんか考えるだけ無駄だ。匿名コンなど惰性で運営して、主催者の作品も適当にゴーストライトさせておけばいい
「そんな、仮にも僕達の作者なんだからヤケバチにならないでくださいよ……。アイデアが必要なら僕達だって協力しますよ」
私以上の発想が私のキャラから出てくるはずもない。登場人物は作者の頭脳を超えることはできないんだからな
「あら、それは誤解でしてよ?」
「作者が時間かけて考えたことをキャラには一瞬で思いつかせるとかー、色んな人から知恵をもらって考えたことをキャラには独力で導き出させるとかー、いくらでもやりようはあるよー。初歩的な話だとお姉さん思うけどなぁ?」
……じゃあ、お前らの力で名案を出してみろよ。作者命令だ
「貴兄が作者だからといって、指揮命令に服する義務はないのだが……」
「……なんつーか、オレはバカだからわかんねーけどさ」
「出たっ、自称わかんねーバカがバカゆえの鋭い意見を言うパターンっ」
「ウルサイなっ。……いや、なんかさ、そんなに悩むくらいならもう、順位なんか付けなくていいんじゃね?」
何だと?
「作品持ち寄って、皆で感想とかダベってさ、それで終わりでいーじゃん。得点とか勝ち負けとか考えるからギスギスするんじゃねーの?」
……。
「ほぉほぉ、ライトにしては案外、
「セーコクって何?」
「まあ、そうね……。勝敗が絡むからしがらみも生まれる……この道の真理かもしれませんわ」
「何ならユカリさんが相手にしてるのって、そういう人達ばっかりですもんね」
だが、流石に競争の要素を無くしては、最早匿名コンとは……
「どーしてもっていうならさ、コンはコンパのコンで、作者同士の出会いの場ってことにしたらいいじゃん」
「ライト、そんな
「ジグチって何?」
……ふっ。ふふふ、匿名コンパか。そうだ、思えば私は……
「えぇ……僕が言うのも何ですけど、あんなんで良かっ」
「黙って聞いていなさい。板野先生が何かいいことを言おうとしてるのだから」
「純粋に創作を楽しむ心がナントカカントカ、かなっ? 改心パターンとしてはありがちだけど、もう字数も残り少ないからしょうがないよねー」
「……まあ、一件落着と言ってもいいかしら」
「では、これにて閉廷」
「みんなー、おつかれさまー」
「次の依頼者が待っている」
----------
【本文の文字数:5,000字】
【登場キャラクター】
・『ブラック企業をぶちのめせ!』より、
https://kakuyomu.jp/works/16816700428483728427
・『駄作バスター ユカリ』より、
https://kakuyomu.jp/works/16816700428506399124
・『ノベルバトラー ライト -新時代小説ゲーム戦記-』より、
https://kakuyomu.jp/works/16816700428532913321
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。