【No.009】自称学園一の美貌を誇る僕の先輩はこんなことばかりしているから将棋が強くならないのだ
「ゔぅ~、詰んだぁ~、もうダメよぉ~」
「どうしたんですか先輩、部室に来るなりそんな掲示板で叩かれた板野かもみたいな声出して。学園一の美貌
「だから泣いてるんじゃない! ちょっとは心配しなさいよ!」
「だから初手『どうしたんですか』って聞いたじゃないですか。どうしたんですか、そんな自分より下だと思ってた作者仲間に書籍化決められた板野かもみたいな顔して」
「さっきから何なのよ、その意味不明な比喩は。アナタ板野かもの声とか顔を知ってるの?」
「いやあ、あのベニヤは性別年代不詳なんで、せっかくなら先輩みたいな美少女
「どっからどう見たって中年以上でしょアレ。って、あのベニヤ野郎の話がしたいんじゃないのよ。匿名コンの話なのよ!」
「つまりベニヤ野郎の話じゃないですか」
「あ・た・し・の! あたしの主催してる方の匿名コン!」
「ああ、なんかそんなこと言ってましたね……。何でしたっけ? 『プチ匿名コン・痛い美少女編』でしたっけ?」
「『プチ匿名コン・将棋編』よ! 誰よ痛い美少女って!」
「失礼、痛い自称美少女の間違いでした」
「仮にも先輩に対するその態度こそが最大の間違いよ」
「やだなあ、それはパワハラのない平和な将棋部を先輩が築いてこられた証じゃないですか。それで? さっさと本題進めてくださいよ」
「いっぺん将棋道場に連れてって目上への礼儀を叩き込んでもらったろかホンマに……。まあいいわ、本題はあたしの匿名コンに人が集まらないって話!」
「えーと、あとどのくらい会話の手番進んでからマジレスしたらいいですかね?」
「今
「えー、うーん、じゃあ言いますけど、そりゃ将棋編じゃ人集まらないの当たり前でしょ。先輩の企画に乗っかって短編小説を書く暇がある人ってだけでも限られるのに、その中に将棋ネタを書きこなせる人なんて何パーセントいるんですか」
「だって、こないだの東雲さんの匿名天才児企画じゃ、頼まれもしないのに将棋ネタを書いてきた人が三人もいたのよ!?」
「じゃあもうそれが『プチ匿名コン・将棋編』だったってことでいいじゃないですか」
「やーだー! あたしが主催者やりたいのー!」
「マジレスすると匿名コンの主催者なんて手間ばかりかかって金にもならないし何のメリットもないと思いますけど……」
「だってだって、あたしだって一度くらい主催者の立場で威張りたいのよ!」
「その王様気質、部室の外で出したら角が立つので気をつけた方がいいですよ」
「舐めるんじゃないわよ、アナタに言われるまでもなく外では猫被ってるもんっ」
「吹けば飛んでっちゃいそうな猫だなあ……」
「それでっ!? 先輩が恥をしのんで悩みを告げたんだから、何か人を集める名案出しなさいよっ」
「えぇー……。じゃあ僕に
「ぐぬ……ちょっとあたしより強いだけでいい気になってぇ……!」
「マジレスすると将棋か小説のどっちか一本に絞らないから趣味レベルでも一歩先に行けないんじゃないですかね」
「ぬぬぬ……! いいもんっ、あたしにはイザとなったら顔出し将棋系YouTuberって道があるもんっ!」
「
「……ねえ、どうでもいいんだけど、さっきからアナタ」
「ああ気付きました? まあシナモンティーでも飲んで落ち着いてください」
「何よ、急に気が利くじゃない」
「
「だ・か・ら! 何なのよ、さっきから将棋の駒の名前を無理やり発言に混ぜ込んで! あたしが気付いてないとでも思ってるの!?」
「僭越ながら一提案ですよ」
「何がよ!?」
「だから先輩の匿名コンの話ですよ。将棋物なんてニッチなジャンルで募集しても人が集まるわけないでしょ? だから難易度を数段下げて、駒の名前が本文に入ってればOKとでもしたらいいんじゃないですか」
「えぇー……。……んー、まあ、アナタにしては……悪い案じゃないかもしれないけど……」
「それであくまで『将棋編』と銘打っとけば、まあ何だかんだで本当に将棋物を書きたがる人もいるでしょ。ホラ、例のベニヤ野郎が今やってる『主催者の苦悩編』とやらも、何だかんだで本当に匿名コンの改善案を出してる人が多いみたいですし」
「そうねえ……じゃあ、ちょっとそれでやってみようかしら……」
「じゃ、これにて一件落着ってことで。話が片付いたところで今日も軽く
「えっらそうに……見てなさいよ、いつか平手でアナタに勝ってやるんだからっ」
「マジレスすると小説との二刀流をやめない限りは難しいかと……」
「もうマジレスはいいってば! ……その、ありがとね」
「お礼なんて。先輩を助けるのは後輩の務めですから」
「しれっとよく言うわ。じゃあ今日もお願いね、
「ええ、お願いします、
「今更だけど、将棋物の登場人物の『駒の名前が名前に入っている率』の高さって何なのかしらね」
「いっぺん統計取ってみたいですね」
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