時に西暦2030年。日本は某国の思念兵器による侵略の危機に晒されていた。法の網に縛られた自衛隊に代わって立ち上がるのは、人々の応援を力に変えて戦う「防衛アイドル」！

現役アイドル達の戦いに巻き込まれた少女は、成り行きで変身（デビュー）を果たし、猛烈な声援を受けて敵に立ち向かうことになる――。

……という導入、というかこれが全てなのですが、僅か5千字の中に凄まじい熱気と突っ込み所が詰め込まれた、出落ち小説の見本のような作品。

アイドルが敵と戦う作品には、ファンの応援が力になるギミックが付きもの。本作もそれに違わず、ファンが応援アプリで送る「イイネ」がアイドルのエネルギーになるのですが、戦闘シーンの大半を占めるこの「イイネ」の描写がとにかく圧巻。「可愛すぎだろ！」だの「おぱんつ！」だの「88888888（（拍手の意））」だの、オタク全開の応援コメントが縦横無尽に画面を埋め尽くし、もはや小説を読んでいるのか動画サイトを見ているのか分からなくなるくらい。ここの熱量だけでも一読の価値があります。

序章だけにしておくには惜しい作品ですが、作者さん曰く「いつか続きを書きたい」とのこと。イイネの準備をしながら私もそれを待っていますよ。