ヘビーローテーション0048
▶▶▶ROTATION 47▶▶▶
「先生。今夜の会場が見えてきましたよ」
「ああ」
「今宵は記念すべき日になりますね。史上初、東京ドームでの国内全アイドル合同総選挙。先生の寵愛するA子が遂に芸能界の頂点に立つわけですね」
「……長かった」
「はい?」
「この日が来るのを、私はずっと待っていた」
「ええ。おめでとうございます、先生」
「到着致しました。先生、お手を」
「いや、いい。今夜は誰も私に触れるな」
「はっ?」
「……歴史が変わる瞬間だ」
◀ ◀ ◀
▶▶▶ROTATION 00▶▶▶
『こちら、帝都上空より中継しております。A子女王陛下の即位48年を祝う祝賀コンサートに、国民は沸き立っております。割れんばかりの万歳のコールとともに、陛下を讃えるサイリウムの光が、ここ第七新劇場ドームの周囲数キロを埋め尽くしております――』
◀ ◀ ◀
▶▶▶ROTATION 01▶▶▶
「主文、被告人を懲役5年に処する。被告人は、平政22年7月10日、アイドルグループ・アキバスターズのメンバーであるA子の殺害を企て――」
◀ ◀ ◀
▶▶▶ROTATION 00▶▶▶
「死刑だと! 国家の認めない歌を歌っただけで死刑! こんな滅茶苦茶な裁判があるか!」
「傍聴人は静粛にしなさい」
「私の教え子達が何をした!? 彼女達は自分で作った歌を歌いたかっただけだ! それが命を奪われるほどの罪だというのか!」
「傍聴人の退廷を命じます」
「正義は! 正義はどこにあるんだ!」
◀ ◀ ◀
▶▶▶ROTATION 13▶▶▶
『次のニュースです。本日13時頃、人気アイドルグループ・アキバスターズがライブを開催中だった東京・秋葉原の劇場に、ナイフを持った男が突如押し入り――』
◀ ◀ ◀
▶▶▶ROTATION 00▶▶▶
「あんた、懲役1830年だってな。一体何したらそんなにブチ込まれるんだ?」
「……私は、教え子達の無実を訴えただけだ」
「ひひっ、そいつぁ災難だったな。今の御時世、その手のヤツが一番罪が
「いや、それは違う」
「あん?」
「彼女達は、あの連中以外の歌を歌っただけで死刑にされた。今この国で最も罪が重いのは、あの連中を好きにならないことだ」
「はっはっ。
◀ ◀ ◀
▶▶▶ROTATION 19▶▶▶
『本日、人気アイドルグループ・アキバスターズの握手会に爆発物を持った男が乱入した事件について――』
◀ ◀ ◀
▶▶▶ROTATION 08▶▶▶
「あんた、目が覚めたのか」
「ここは……。そうか、また私はあの刑務所に戻ってきたのか……」
「何言ってやがんだ、俺達はずっとこの檻ん中だろ。随分うなされてやがったが、悪い夢でも見たのかよ」
「……ああ。君とこの話をするのももう4回目になる」
「あん?」
「何度やってもあの女を殺せないんだ」
「そりゃ一体何の話だ?」
「過去の世界で私は目覚めるんだ。この国に自由というものがまだ残っていた時代で……」
◀ ◀ ◀
▶▶▶ROTATION 37▶▶▶
「は……はは。やった! やったぞ! 遂に殺した!」
「貴様っ、そこで何をしている!」
「はははは! A子は死んだ! アキバスターズは終わりだ! 未来は変わるぞ! ははははは!」
「殺人の現行犯で逮捕する!」
「これで彼女達も助かる!! ははははは!!」
◀ ◀ ◀
▶▶▶ROTATION 38▶▶▶
「――はっ!」
「おい、あんた、大丈夫か。どんな
「っ……!? ここは、いつもの……?」
「まあ、一生この檻の中じゃ、良い夢なんか見られっこねえわな」
「……何故だ、私は今度こそあの女を殺したはず!」
「あん? 何だあんた、殺しまでやってたのか?」
「過去の世界で女王を殺したんだ! 女王になる前のA子を!!」
「女王? そりゃあ、あのY子女王のことか?」
「何っ!?」
「A子ってのは、大昔に変質者に殺された子だろ。この国の女王といえばY子じゃねえか」
「馬鹿な……そんなことがあってたまるか! 私の教え子達は、あのA子に死刑にされたんだ!!」
「わかったからよ、まずは水でも飲んで落ち着けよ」
「クソッ、A子一人を殺したくらいじゃ駄目なのか……どうすれば……どうすれば歴史を変えられる……?」
◀ ◀ ◀
▶▶▶ROTATION 41▶▶▶
『続報です。本日、人気アイドルグループ・アキバスターズのメンバーが乗るロケバスで爆発物が破裂し、死者12名、重傷者4名が出た事件について――』
◀ ◀ ◀
▶▶▶ROTATION 44▶▶▶
「おい、あんた、大丈夫かよ。一体どんな夢見たらそんなにうなされるんだ」
「……君、この国の女王の名を知ってるか?」
「あんた、おかしくなっちまったのか? 女王ったらM子しか居ねえだろうが」
「今度はM子か……。前のループではR子だったがな」
「誰だよそいつ」
「……人気メンバーを殺したくらいじゃ駄目なんだ。グループ自体の息の根を止めないと、歴史は変わらない」
「そのためには……」
◀ ◀ ◀
▶ ▶ ▶
▶ ▶ ▶
▶▶▶ROTATION 47▶▶▶
『――それでは、見事1位に輝いたA子さんに、総合プロデューサーよりトロフィーの贈呈です!』
「おめでとう、A子。君がここに立ってくれて私も嬉しいよ」
「ありがとうございます。私を一人前のアイドルに育ててくれて、先生には何てお礼を言ったらいいか……」
「泣くな、泣くな。日本中の人達が見てるぞ」
「……そう、日本中が見ている。この場でもし私が君を殺せば、アキバスターズの天下は終わるだろうね」
「……先生?」
「グループの生みの親である私が衆人環視の前で乱心し、絶対的センターのA子を殺す。流石にこれほどの事件があっては、誰もアキバスターズを再建しようなんて思うまい。それどころか、アイドル自体がこの国においてタブーになる」
「先生、何を言って……」
「長かった。元の歴史でプロデューサーになる筈だった男を蹴落とし、何十年も掛けてこの地位に辿り着いた。ボディチェック無しで君の前に立ち、日本中の注目が最も集まるこの場で君を殺すために」
「ひっ――」
「今の君にまだ恨みはないが……未来の教え子達、そして自由を求める全ての人達のために、君にはここで消えてもらう」
「終わりだ、女王」
「誰か、助けて――」
「死ね!」
バァンッ
▶ ▶ ▶ ROTATION 48 ▶▶▶
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。