第31話
「ゴウ君とアンリは幼馴染で、ずっと仲が良かったんだよね? それなのに、どうして別れることになったの?」
「う~ん……。長く幼馴染でいたからかな? 恋人になると、なんか違うっていうか……」
適当なことを言っても、ヤヨイは「なるほどぉ」と深く頷いた。
「で? 今度はイブキ君と付き合うの?」
突然そんな風に聞かれて今度はあたしが驚いた。
目を丸くしてヤヨイを見つめる。
「どうしてそう思うの?」
「みんな噂してるよ? アンリとイブキ君はいい雰囲気だって」
「嘘でしょう?」
確かにあたしはイブキを狙っているし、気に入られるために一生懸命だ。
でも、そんなにいい雰囲気になれていると思ったことはなかった。
「気がついてなかったの? イブキ君、女子の中じゃアンリにだけ自分から話しかけてるんだよ?」
「そうなんだ?」
イブキのことは毎日見ていたはずなのに、何も気がついていなかったことになる。
と、同時に嬉しさがこみ上げてきた。
イブキにとってあたしは特別な女の子かもしれないという期待が膨らんできて、自然と頬が緩む。
「でも、イブキはライバルが多いし、付き合うとか無理かも……」
「そんな風に不安になるってことは、やっぱりイブキ君のことが好きなんだ?」
ヤヨイの問いかけに、あたしは素直に頷いておくことにした。
本当はイブキのことが好きかどうかなんてわからない。
ただ、イブキの数値に惹かれているだけかもしれないと、わかっている。
「そっかぁ。ライバルは多いと思うけど、アンリは一歩前を行ってる感じはするよ?」
「そう……?」
「うん。さっきも言ったようにイブキ君はアンリになら積極的に話しかけてるもん。少なくても、嫌われてはないはずだよ?」
「そうだよね……?」
嫌いな相手に積極的に話かけたりはしないはずだ。
ヤヨイのおかげで自身が出てきた。
「ありがとうヤヨイ。あたし、頑張ってみる!」
「うん。でも気をつけなよ? イブキ君のファンに嫌がらせとかされないようにね?」
ヤヨイからの忠告に一瞬嫌な予感が胸をよぎった。
イブキファンの中にはイツミも入っている。
もしイツミのターゲットがあたしに変更されたら……?
そこまで考えて、慌てて左右に首を振った。
現実に起こっていないことを考えても仕方がない。
あたしはあたしで頑張るだけだ。
気を取り直し、自分自身にそう言い聞かせたのだった。
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