第8話 離婚

多恵は、離婚を決意し実家に戻る事になった。両親、兄弟、には相談もしなかった為怒られた。多恵は、直ぐに仕事を探さなければいけなかった。親権は、圭一が望まなかった為、多恵が圭介の親権を持つ事は出来たが、専業主婦で結婚当初より家のお金を任されていなかった多恵は、離婚時の貯蓄の状況も把握していなかった。多恵を雇ってもらえるような所はあまりなく圭介の保育園も考えた結果、保育施設のついた病院に看護助手として勤めることを決めた。久しぶりの仕事で緊張していた事もあるが、看護助手の仕事は多恵が思うよりハードな仕事だった。それでも多恵は辞めたいと思いながらも圭介の為と言い聞かせ踏ん張って働いた。

仕事を初めて暫くすると、銀行から職場に電話があった。「家のローンの支払いが滞っていて、奥様が連帯保証人になっているのでお支払いのご連絡をさせていただきました」と言われ多恵は「確認してから連絡します」と返事をした。圭一が何度も海外に足を運び、使い込んでいた為、貯金は、1円も残っておらず、あるのは借金だけだった。どうして良いか分からないうちに、多恵の元に裁判所から手紙が届いた。

裁判所からの通達で、多恵の給料は、差し押さえられた。事務長が事情を聞いてくれて、毎月の給料から返済していく事を約束し、借金返済の肩代わりをしてくれた。多恵にとっては、不幸な事実ではあるが、ありがたかった。しかし、自分の手元に残る給料は、僅かで食べていくのが精一杯だった。

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