第12話 学校

圭介は、少年院に入っている間、真面目に過ごした。働くのに必要な資格も取らせてもらえた。少年院での生活は不自由を感じる事はなかった。

一方多恵は、1人になり落ち着いた生活を送っていた。小林とは携帯でやりとりは続けていた。

多恵は職場の上司に勧められ、看護学校に入学した。お金は無かったが、病院が、奨学金を出してくれる事になった。

久しぶりの学校に気持ちが高まった。仕事をしながら学校へ通ったが、生活費は足りず、学校の後にパチンコ店の清掃アルバイトをした。

学校は難しい勉強も多かったが、周囲の友達が助けてくれた。

順調に学校生活も進んでいたが、実習が始まった頃から先生の態度が一変した。

多恵の耳が片方聞こえなかった為だった。

多恵は学校にその事を伝えておらず、血圧を測る際の聴診音が聞こえにくかったり、声をかけられても反応が鈍かったりする事があった。そのため実習教員から学校へ指摘があったのだ。

先生は、「聞こえなくてどうやって患者を診ていく気なの?黙って入学するなんてどうかしてる」と、それからは多恵を責め続ける言葉が毎日のように続いた。

多恵は、耐えきれなくなり、卒業まであと半年というところで退学する事を決意した。

退学した事で、病院からは奨学金の返却を求められ毎月の給料から返済していく事になった。

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