第16話 逃げ

多恵は、舞の家での居候生活を始めた。

舞の家は、離婚して戻ってきていた。長女と孫2人、中学生の次女が一緒に暮らしていた。

長女は、3人目を妊娠中だった。

多恵は、賑やかな舞の家に、嫌な事を考えずに済んでいた。

しかし、病院から多恵宛に圭介から電話があった事を知らされた。多恵は気が気ではなくなり、亜希に相談をした。

「職場を知っているなら、そのうち職場まで来ちゃうんじゃないかな?」「逆上したりしなければ良いのだけど」と亜希が言った。

以前、多恵の夜勤中に、職場まで圭介が来て、お金を取りに来た事があった事を亜希に話した。「多恵ちゃん次第だけど、何かあったらいけないから師長に話しておいた方が良いんじゃないかな?それに、職場を変えたらどうだろう?」と提案された。

多恵は、「とにかく師長に今は話して、仕事変えるのも考える」と言い師長にこれまでの事情を話し、相談した。

師長は、事務に、電話の取り継ぎは、一切せず多恵が退職したという事で、統一するようお願いをしてくれた。

多恵は、師長の対応に安心しきっていたが、亜希は、見つかってしまった時に余計に怒らせてしまうのではないかと心配に思っていた。亜希は、「一回、きちんと息子さんに自分の気持ちも、お金がない事も、自立して生活していけるように話さなきゃいけないんじゃないかな?息子さんも、もしかしたら、子供の頃からの治療が出来ていなくて衝動的に動いていて、自分では止められないのかもしれないし、多恵ちゃんが落ち着いてからで、もちろん良いと思うけど」と圭介と向き合う事も勧められた。

しかし、多恵は圭介の事を怖いと思っていた。

そんな時、仕事の帰り道に圭介に出会した。圭介は、「何やってんだよ、カードは?」と詰め寄り多恵のカバンを漁った。「銀行のカードは止めたままだから無いよ。今まで出来なかった支払いを全部したからお金もない。圭介は、自分でちゃんと生活していかないと。」それだけ話し走って逃げた。圭介は、カバンの中に何もなかった為、追いかけて来なかった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る