第26話 役所

多恵は、圭介に見つかりたくないという気持ちと、話さなければいけないと思う気持ちで葛藤していた。

見つかれば、また昔のようにお金を取られ食べる事もままならない生活になるのではないか?と不安で仕方がなかった。

しかし、圭介の事が気に掛かっていない訳では無かった。亜希に言われた事で、多恵も確かに今のままではいけないと思っていたが、あと少しで定年のため仕事を変えるのも勿体ないという気持ちがあった。

亜希に、「職場が辞めた事になっていても、戸籍とか住民票とか調べたら居場所は直ぐにバレてしまう。もし、居場所を隠しておきたいなら、閲覧制限をかけられるか役所に確認して手続きしないとダメだと思うよ」とも言われていた。言われて初めて、もっともだ!と思った。

多恵は、自分ではそんな事考えもしていなかった為、バレていたらどうしようと思った。

役所に連絡をすると、後日面談し、必要可否が決められるという事になった。その時に、転居前の役所にも連絡し、手続きが必要である事を伝えられた。多恵は、全部で3カ所の役所に連絡し、面談にて事情を話しスムーズに手続きしてくれる事に決まった。

多恵は、凄く安心した。そして、圭介とは話さない事に決めた。連絡先も分からなくなっていたし、警察も会わない方が良いって言っていたからと自分の心に言い聞かせていた。

亜希には、手続きが済んだ事も圭介の事も話さなかった。

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