第25話 出所
多恵の職場に、圭介より外線が掛かってきた。圭介が出所してきたのだ。
多恵は、退職した事になっていたが、時が経ちそのように対応する事も忘れられていた。
電話は、多恵のいる病棟まで繋がれた。
その日、多恵はたまたま日勤で職場におり、「息子さんからお電話です」と事務員に告げられたが、「すみません、辞めた事になってるので、退職したと伝えてもらって良いですか?」と慌てて多恵はお願いした。
事務員は、お願いされた通り伝えた。
多恵は仕事中であるが、気が気ではなくなってしまった。何とか仕事を終えて、直ぐに亜希に連絡をした。亜希は「病院側も、ずっと統一出来るとは思わないし、いつかバレる時が来ると思う。それに、バレてしまった時に嘘をついていたという事を知ってしまったら、それこそ何を言っても耳には入っていかないだろうし、病院側に対しても嘘を教えられてる訳だから、逆上する事だってあると思うよ。だから、私は仕事を変えるのを勧めたし、今の状況は解決策にはなってないと思うよ」と話した。
亜希は、圭介から銀行のキャッシュカードを取り返した時に、多恵に頼まれて、知り合いの職場を紹介し、多恵は面談に行っていたが、今の職場で、退職したという事にすると言われて、亜希の紹介を断っていた。その時から、亜希はいつかは、嘘はバレると思っていたし、何より嘘だと知った時の圭介が心配だったのだ。
しかし、多恵は、その当時、亜希の言うことは聞かず、先方に失礼な態度をとっており、亜希に怒られた。
それにも関わらず、困った時だけ亜希に直ぐ連絡をした。亜希も、分かっていた事だけに少し呆れていた。
亜希は、「私は、圭介くんときちんと一回話した方がいいと思う。何で電話して来たのか分からないし、お金なのかもしれないけど、でもそうじゃないのかもしれない。何かあったのかもしれないし、私は、ちゃんと治療した方が良いと思ってるしね。大変かもしれないけど。でも、多恵ちゃんが選ぶ事だけどけどね。このまま圭介くんから逃げ続けるのか、どうするのか。」本音で話した。
多恵は、「考えてみる。ありがとう。」と声のトーンは下がりそれだけ言って電話を切った。
多恵は、舞にも連絡した。舞は、そのうち病院前で待ち伏せされるのでは?と心配した。
舞から亜希に多恵の事でLINEが来た。
亜希は多恵に話した事を伝えた。舞は、亜希のいう通りだと思った。
見つかりたくなければ仕事を変える必要があると思ったし、圭介がお金じゃない事で連絡して来てる可能性も考えられると思った。
でも、2人とも多恵は逃げたいと思ってるだろうと思った。でも、行動に移さない事を疑問に思っていた。
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