第24話 落ち着いた生活

多恵は、アニメ全般好きで、時間があればアニメを観ていた。特に、異世界を舞台にしたものが大好きだった。

人生を大きく変えられる主人公の存在に憧れ、いつか自分も転生したいと本気で思うようになっていた。

小さい頃から鈍臭かった多恵は、揶揄われたりする事も多く、大人になっても周囲に注意される事が多かった為、自分を変えたいという願望が強かった。

「魔法が使えたらなぁ」とアニメを観ながらぶつぶつと呟いた。

多恵の日常は、仕事をし、家に帰ればアニメを観るという事の繰り返しだった。多恵にとってはそんな些細な毎日も、圭介と離れてやっと手に入れる事が出来た。

一方亜希は、多恵と同じようにアニメも好きだが、色々な事に興味を持っていた。独身時代には国内から海外旅行、アーティストのコンサート、スポーツ観戦、色んな事を体験してきた。そんな亜希ではあるが、18歳の時に父が悪性リンパ腫となり、24歳まで闘病生活を送っていた為、その間は、朝6時から14時までは、コンビニ店員のバイトをし、16時から23時までは工場でパートをしていた。それでも生活は大変なもので、家は競売にかけられて失い、支払いや生活費で、月に3000千円しか手元に残らない時もあった。それでも、亜希は父が生きているだけで不幸だと感じる事は全く無かったが、父の他界後に、振り返ると大変な日々だったと思った。その後は、直ぐに奨学金を貰いながら看護学校へ入り看護師となり、1人になった母の生活を見ながらも、色んな経験をしていった。

そのため亜希はお金がないという経験は、本当に大変な事だと思っており、多恵の事を放っておく事は出来なかった。

しかし、亜希は、多恵が圭介から離れ、暮らしは安定したものの、圭介の病気の事が気に掛かっていた。

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