おばちゃんは、異世界を夢見る

まるまる

第1話 右耳が聞こえない

転生したいと願ったおばちゃん


おばちゃんの人生は、波乱万丈という言葉がよく似合う。60歳を目の前にし、異世界転生したいと願った半生を話していこうと思う。

おばちゃんの名前は三好多恵、産まれた時から右耳が聞こえていなかった。しかし、片耳が聞こえていたことにより親が気づくのが遅かった。声をかけても反応がない時には、「この子はアホなのか?」と思っていた両親だったが、成長しても変わらない反応に、やっと聞こえてないという事に気づき病院へ連れていった。しかし、病院での治療は耳から風を通すものだったが多恵には不快で、初めは我慢をしていたものの全く聞こえるようにも感じられず、「聞こえなくても大丈夫」と治療をやめた。

多恵は、小柄で病気がちな子で、何をするにも遅く、更に片耳が聞こえない事で周囲にいじめられることもあった。右側から話しかけた時だけ反応が出来ず無視されていると思われることも多かったのだ。それでも多恵は「私、こっち側聞こえてないからこっちから話しかけて」と左耳を指差し、明るく振る舞った。

しかし、多恵の本心は、「どうして自分ばかり」と悲しい気持ちでいっぱいだった。

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