第29話 舞の不調

亜希が不信感を抱き始めた一方で、多恵は、自分が馬鹿にされている様な気分になっていた。皆んなで集まる時にも、周囲は、多恵の天然さや、訳の分からない発言に、揶揄う事が多く、笑いに変わる事が多かったが、多恵には不満に感じていた。そのため、「舞ちゃんを家に呼ぶのは嫌だなぁ。嫌な感じだし」と言った事をいう事が多くなっていた。亜希は、自分の母親の体調が悪くなり忙しくバタバタしていた。悩む事も多く、亜希もイライラする事が増えていた。職場でも、人員減少によるしわ寄せが多く、仕事への不満は、沢山の人が持っていた。亜希は「もうっ、更年期だからすぐイライラしちゃう」と笑いながら話してると「そうそう私もそう、本当にイライラしやすくなっちゃってる仕事も、嫌な事ばかりだしねー」と舞が返す。こんな会話が亜希と舞のルーティンのようだった。そんな話を繰り返しながらも2人とも真面目に働いていた。

ある時、亜希が夜勤が終わる頃に電話がかかってきた。電話を受けると舞が大号泣で、「涙が止まらなくて、仕事に行こうと思うんだけど、涙が溢れちゃってどうしたらいいか分からない」声を振り絞りながら舞は話していた。

亜希は、「日頃の溜め込んでいるものが爆発しちゃったんだよ、伝えておくから休みな、無理せずゆっくりしないとダメだよ」と言い電話を切ると、亜希まで涙が溢れた。

亜希は仕事を終えて、舞の家に向かった。舞と、半日たわいもない話をしながら、少し落ち着いた様子だったので、子供が帰って来るから帰るねと舞の家を後にした。

舞のいつもの元気さはなく亜希は心配だった。

そんな中多恵は、舞から連絡が来て電話で話していたようだがどうしたら良いだろう?と亜希にLINEをしていた。その為、亜希は駆けつけないのか?という気持ちを持ちながらも心配しているだろうと思い、多恵に舞の様子を連絡した。すると多恵は、「じゃあ良かった。気になってたからさ。洗濯物も終えたしこれからパチンコ行ってこよう」と弾んだ声で話した。亜希は、呆れて行ってらっしゃいと言い電話を切った。内心は、あんなにお世話になったのに、上部だけでパチンコなんて信じられないという気持ちだった。翌日、職場への通勤途中に、舞からLINEが来ていた。「家を出たけど、不安で泣きそうだ」というものだった。亜希は、励ましながらも無理はしないように返信しながら送迎バスに乗るまでの道のりをLINEでやりとりした。

しかし、職場に着いた途端に涙が溢れてそのまま帰ることになったと連絡が入っていた。

多恵からも「泣いちゃって帰ったらしいよ」とLINEが来ていた。

亜希は、今日も様子を見に行こうと思い昼過ぎに、「美味しい物でも食べて気晴らししよう」と舞に連絡をしていた。

多恵からも連絡は来ていたので、あとで様子を見に行く事をLINEすると、「自分はいけないから、宜しく」と返ってきた。

亜希は呆れていたが、放っておいた。自分の子供が帰宅し宿題と明日の準備を終えるのを確認して、夫に子供達をお願いすると多恵から、「用事が終わったから、まだなら一緒に乗せていって」と連絡があった。

嫌だなという気持ちはあったものの、亜希は乗せて行く事にした。

その途中「病院に行く?って聞いたんだけど、外に出たくないって言うからご飯食べになんて行けるのかな?」と多恵が話してきた。

亜希は、「病院なんて言われたら出たい訳ないでしょ!お金だって無いって言って悩んでるのに」と怒り口調で言い返した。

そして途中、舞の家に差し入れを買いゆっくり寝れるようビールと食材を買うと、多恵が「私はあまりお酒はあげたくないかな」と言ってきたが、亜希は、舞の唯一の気晴らしであった事を知っていたため、「買っていく」と言い購入した。

舞の家に着くと、やはり元気のない舞がいた。亜希は、「差し入れ」とだけいい、多恵は、自分が買いたくないと言ったビールなのに、「じゃーん」と言いながらビールを出していた。亜希は心底呆れてしまったが、落ち込んでいる舞には何も言わなかった。亜希は、「舞ちゃん、何が食べたい?」と聴き「お寿司」と言うため、「じゃあ、お寿司食べに行こう」と舞の娘も一緒にお寿司屋さんに行った。

お会計は、亜希が、元から奢るから行こうと誘っていたため、亜希がお会計をした。

多恵は後ろから覗いていたが、舞が、「お金...」と言うと多恵が「いいのいいの」と自分が奢ったかのように返事した。

亜希は、凄くイライラしていた。自分の分もろくに払わないくせに、なんであんな態度が取れるのかと心底嫌になっていた。

舞を送り届け、多恵を送っていった。亜希は、心底嫌な気持ちになっていた。

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