第20話 セクハラ

多恵は、圭介の事を少し気にしながらも日常生活を送っていた。シェアハウスは、台湾から出稼ぎに来ている子もいて、たまに食事をお互い作ったりし、話し好きの多恵には、1人の時間を持ちつつも、人と会話できる時間があることは嬉しい事だった。

1人の時には、ずっとアニメを観ていた。お金も無く、出かけるのは困難だった為だ。

多恵は、亜希や舞に「異世界転生できたら良いのに」と口癖のように話すようになっていた。

現実離れした世界観に憧れを持っていたのだろう。舞はいつも「多恵ちゃんが異世界行ったら魔物とかに直ぐやられちゃうんじゃない?」と笑い飛ばしていた。

圭介の入院から2ヶ月程経った頃、警察から連絡があり、圭介が無事退院した事。逮捕された事を知らされた。

多恵は、圭介から距離を置く事が出来たため少しだけホッとした気持ちもあった。

それから一年、何事も無く時は過ぎていた。


多恵は、まだシェアハウスで暮らしている。大家や入居者と仲良くなり楽しく過ごしていた。

そんな時に、入居者の1人まだ22歳の愛羅に相談があると声をかけられた。

内容は、大家に買い物に連れて行ってもらったり、ご飯をご馳走になる事があったが、先日、セクハラを受けたという事だった。

その直ぐ後に、大家にも呼ばれ、「愛羅ちゃんとご飯に行ったりしてて、セクハラだと言われて、それで愛羅ちゃんの彼氏と親から警察に言う、示談金をよこせと言われてる。どうしよう僕は何もして無いんだよ。彼氏がシェアハウスまで来て詰め寄られて、10万は渡してしまったんだけど」と言ってきた。

多恵は「恐喝の可能性もあるから警察か弁護士に相談したらどうだろう?」と話した。

「警察だと大事になるから、弁護士のが良いけどどうしようかな?」と言っているため、多恵は自身が世話になっている弁護士を紹介する事にした。

多恵は、亜希に大家の話と弁護士を紹介する話をしたが、「多恵ちゃん、大家さんが何もやってないのに警察に行けないのも、お金渡したのも何かあるんじゃ無いかな?女の子の方に話聞いてみたら?知り合いの弁護士さんも、嘘みたいな事があったら困るんじゃ無い?」と言われた。多恵は言われて初めてそうかと思い、愛羅に確認してみる事にした。

話を聞くと、「前にも似たような事があって、彼氏も親も凄く怒って、相手から示談金みたいなのをもらった事がある。それで、女性しかいないこのシェアハウスに入ったの。だけど、愛羅も悪いけど、大家さんおじいちゃんみたいな感じだからそんなの無いと思ってて、大家さんの家にご飯に呼ばれて行ったら胸を触られて、キスされて、私も驚いて直ぐに逃げてきちゃったんだけど、彼氏に話しちゃったから、ゴタゴタしちゃったんだよね、最終的には警察に行くと思うんだけど」と愛羅は、話した。

多恵は2人の言い分は食い違っているが、亜希が話した通り警察に行けないと言っている大家が怪しいと思った。

多恵は、弁護士の連絡先を教えてしまった後だったが、大家に「大家さんほんとに何もして無いの?愛羅ちゃん、警察届けるみたいなこと聞いたけど」と話すと、大家はバツが悪そうに「それは困るよどうしよう弁護士さんになんとかしてもらおう」と言った。

多恵は、愛羅の言っている事が正しいのだと思った。

多恵は、亜希に確認した結果を話した。

亜希は「大家さん、もしかしてこれが初めてじゃ無いんじゃ無いかな?だからシェアハウス女性限定なのかも?」と怪しんでいた。

大家と話した次の日、大家が部屋に来て「実は、昔に似たような事があって警察に届けられて示談で済んだんだけど、またこんな事があって娘にでも知られたら困るんだよ」と言ってきた。亜希の予想が的中している事に、多恵は凄く驚いた。

多恵は、「私に出来ることはこれ以上は無いから」と言って帰ってもらった。

多恵は、急いで紹介した弁護士に連絡をし、事情を話した。すると、「分かった。この件はこっちで対処するから多恵ちゃんは、関わらなくて良いよ!そこのシェアハウス出ることも考えた方が良いかもね」と言ってくれた。

亜希にも、言われた通りだった事を報告し、「多恵ちゃんも心配だから、シェアハウスを出た方が良いんじゃ無いかな?一時的に住むために決めた所だし」と転居を勧められた。

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