第21話 2度目の転居

多恵は、大家の嘘に呆れていたが、何回も部屋まで来て、「弁護士さんなんとかしてくれるよね?困っちゃうなぁ」等と同じ様な内容を繰り返すため、嫌気がさしてきていた。

多恵は、元々流されやすいタイプの為、転居を勧められ、転居したいと思う様になっていた。

多恵は、亜希に「引っ越ししたいと思うのだけど、一緒にいい所探してくれるかなぁ?」とお願いすると「良いよ」と直ぐに返事が返ってきた。亜希は手際が良く、あっという間に、多恵の資金で転居出来そうなアパートをピックアップしてくれた。

多恵は、圭介にキャッシュカードを取り上げられていた時に、運転免許証の更新が出来ず、使用できなくなってしまった。

そのため、バス停近く、駅近くで安い物件!

そして多恵の理想を折り込んでくれていた。

物件を5箇所程見て回ったが、どこもピンと来なかった。

亜希は、もう一度探し直してくれて、今まではワンルームだったが、2DKのアパートを見つけてくれた。内見すると、多恵は「こんな良いところがこんなに安いの?もう、ここに決める」

と即決した。

保証人には、義理のお姉さんがなってくれる事になった。

少し古めかしいアパートであるが、中はリフォームされ、6畳の和室と洋室、4畳半の台所がとても綺麗になっていた。

多恵は、シェアハウスに戻ると大家に引っ越しをする事を伝えた。

大家は、「今は、入居者が少ないから、もう少しだけ居てくれないか?」と言ってきたが、多恵は、「もう契約はしてきてしまったので、それは無理です。」と断った。大家は険しい顔をして「そうなんだ、分かった」と渋々納得した。

多恵は、シェアハウスの規定に乗っ取り、1ヶ月後に退居し、新たなアパートへと引っ越しをした。本来であれば、前家賃で支払いしていた為、家賃の返金がある予定であったが、大家は返さなかった。しかし、多恵は、大家に会いたくなかったし、話もしたくなかったので、返金は諦めてシェアハウスを後にした。

多恵は、新たな生活にテンションが上がった。インテリアや、小物の色は大好きなグリーンで統一した。冷蔵庫や電子レンジまでグリーンにしていた為、舞に「カッパか?頭の皿乾いたら死んじゃうよ」と揶揄われた。

少し不愉快だったが、「そう、カッパ、カッパ」と明るく答えた。

多恵は、これで気兼ねなく過ごせるんだなぁと嬉しく思っていた。

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