婚約破棄をされる(させる)転生者
第28話 婚約破棄をされる(させる)転生者01
「ハナ、お前との婚約を今を持って破棄する」
世の中にはどうあっても理解し合えない人間関係というものがある。
どれほど言葉を尽くそうとも、その言葉が相手に届かなければ何の意味も持たないからだ。
今目の前のある状況はその典型だと言えるだろう。
自分が惚れた女の言葉を無条件に信じ、その裏どりもなにもなしに私を断罪している元婚約者を見ていると頭が痛くなってくる。
「ヨハン様、仰っている意味がわからないのですがどういうことでしょうか?」
「お前がアンジェリカにしてきた嫌がらせの数々を聞き、我慢の限界が来たのだ。お前との婚約は破棄させてもらう」
こうなることはわかっていましたので驚きはありません。
「嫌がらせ、ですか。具体的にはどういうものでしょうか? 私、アンジェリカ様とはまともに話したことがないのですが」
「白々しい言い訳をするな。すべてアンジェリカから聞いて知っているぞ」
「と言われましても、一体何のことだか分かりかねます」
「公衆面前でアンジェリカに恥をかかせ、お茶会に誘われないように手を回し、挙句階段から突き落としてなきものにしようとしたそうではないか」
「・・・最後の件については全く記憶がないのですが、まぁ順番に説明していきましょうか。公衆面前で恥をかかせられたとのことですが、おそらく食堂での一件でしょう。あれはアンジェリカ様の立ち居振る舞いに問題があったため注意したに過ぎません。殿方には殿方の礼儀作法がありますように、我々女性にも礼儀作法がございます。婚約者でもない殿方にべたべたと体に触れるのははしたない女性だとまわりに思われるのでやめた方がいいと伝えただけですわ」
「嘘をつくな、言葉汚く罵ったと聞いている」
「ヨハン様が先程おっしゃったように公衆面前での出来事です。見ていた方がたくさんいますのに嘘をついても意味がないでしょう」
私の言葉に少ないくない人間が頷くのが見えた。
「また、お茶会に誘われないとのことでしたが、こちらも私がなにかしたという事実はございません。ただ、アンジェリカさんが他の令嬢の婚約者にベタベタするなど不快な思いをさせていたため、嫌われていただけだと思います」
どこの世界の自分の婚約者に近づく女と仲良くしたいと思う令嬢がいるのだろうか。
そもそも彼女はお茶会でも振る舞いが悪くて、有名なのだ。
お茶会が台無しになるとわかっているのに、わざわざ誘う令嬢はいないだろう。
それを知らないわけではないだろうが、きっと醜い嫉妬だとか思って気にしてないのだろう。
まぁ、話がややこしくなるので、わざわざ口にしていたりはしないけれども。
「あと、アンジェリカ様、階段から突き落としたという話ですが、いつのことでしょうか?本当に記憶がないのですが」
「惚けるつもりか。ちゃんと証言をする者もい・・・」
「そういうのはいいですから。いつのことでしょうか?」
「貴様・・・先日あった学園祭の時だ」
「学園祭、ですか。誰かが怪我をしたというお話はなかったですが・・・確認しますが本当に学祭学園祭の時に私が突き落としたというのですか?」
「そうだ」
「・・・アンジェリカ様、念のために確認しますが本当に学園祭の時なのですね?そして目撃者もいると?」
「貴様・・・あくまで認めないというのか」
「と、おっしゃられましても学園祭にはまともに参加していませんでしたから」
「なに?」
そう、確かに学園祭に参加してはいたが、ちょっと変わった研究発表であったためずっとそちらにかかりきりだったのだ。
「発表後すぐに話題になりましたので皆様方もご存知だとは思いますが、当日は朝から研究内容の保護のため、王妃様からの護衛がつけられておりました。ですので、アンジェリカ様のおっしゃる通りであれば、当然王妃様にもそのことが伝わっているはずなのですが、お話は聞いておりません」
そう、学園祭の日、私には王妃様の親衛隊が護衛についていたのだ。
というのも、この日に発表した内容は美容に関する内容だったからだ。
元々は養母のために研究していた内容ではあったが、完成品を見せたところ王妃様に献上しないと問題になると言われ、すぐに王妃様に献上されたのだ。
ただ、学園祭の研究発表用の研究でもあったため、発表を待っての公表という形を取られ、秘密保持のために私の護衛に親衛隊が貸し出されていたのだ。
正直、そこまでするのかと思うと同時の親衛隊の方々にも申し訳ないと思っていたのだが、親衛隊の方々にも恩恵があるということでみなさんすごいやる気を出されていたのを覚えている。
「事実上、私自身に監視がついており、そのようなことをすることはできなかったと断言できます」
「アンジェリカ、どういうことだ?君は目撃者もいると言っていたではないか」
流石のヨハン様も王妃様の親衛隊が関わっている聞いて彼女が怪しいと思い始めたようだ。
「ヨハン様、信じてください。私は嘘をついてはいないのです」
問われたアンジェリカ様は涙目で儚い感じを出しながら訴えている。
顔色がかなり悪いが、それでもまだ媚を売れるあたりすごいと思う。
「彼女が嫉妬に狂って私を亡き者にしようとしたのは事実ですわ」
「そのことなのですが、私とヨハン様の婚約はすでに解消されております。ですので、私が嫉妬に狂うということはありません」
「「は?」」
私の言葉に2人は言葉を失う。
そう、私とヨハン様の婚約は両家の話し合いのもと、円満に解消されている。
なぜならば、わたしはこうなることをあらかじめ知っていたからだ。
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