第23話 閑話~店主と女将の会話
「うん、心配した自体にはなっていないようだね」
少し前に転生した子の様子を見ながらホッとする。
「スキルの取り方がちょっと特殊だったからあとから問題を起こさないか心配だったけど、これなら警戒対象から外してもいいかな」
この酒場にいた頃に取得したスキルがどう見ても暗殺者になりたいとしか思えない構成だったので心配していたけれど、これなら大丈夫だろう。
「ただ、目立ちたくないからと隠蔽系を抑えていたのに違う意味で悪目立ちしてしまってるなぁ」
隠蔽系スキルのお陰で目立ってはいないけれど、逆に能力があるのに目立たなさすぎて存在の異常さが際立ってしまっているように見える。
「冒険者ギルド、暗殺ギルドそして盗賊ギルドなど関わったことがある組織などは当然目をつけてるでしょうね」
「うまく立ち回りすぎて、別に目立ってしまうなんて皮肉な話だ」
彼は転生してから冒険者ギルドに登録して、冒険者としていた。
チートをただ与えられただけの転生者にありがちな無自覚なスキル無双をすることもなく、新人らしくコツコツとランクを上げていった。
それなどに目立ってしまっているのは新人にしてはそつなくこなしすぎたからだ。
最初に受けた薬草採取でもギルドの書庫で情報を徹底的に集めて出発し、完璧な採取をしてきたのだ。
地元にいた引退した冒険者に手ほどきを受けたということで話を通したものの、普段の振る舞いなどから貴族出身なのかと誤解されるなど違う意味で目立っていた。
そして、極めつけは冒険者になってからひと月ほど立った時に発生したモンスターの大襲来での活躍だ。
新人ということで前線に立たず工法での支援に回されていたのだが、一時的に防衛戦が崩され、モンスターが街に侵入する自体になった。
目立ちたくない彼はこれを偶然倒せた風を装って撃退したわけだが、その痕跡から一部の冒険者たちなどの注目を集めてしまうことになったのだ。
隠蔽系スキルで目立たないようにしていても、一度注目されてしまえばごまかしが効かなくなってくる。
「切り札の魔法の習得するために魔術制御のスキルなんかも取得しちゃったから物理火力以外は異常だし」
「その物理火力も補助魔法や魔道具を使うことで補えますから、消耗戦でもない限り、まず負けないでしょう」
「まぁ、彼の場合そういう状況になる前に姿を消すだろうけど」
そもそも目立ちたくないというのも周りに振り回されたくないからという理由からだ。
貴族などに目をつけられると、派閥争いなどに巻き込まれるのはわかりきっていることだ。
「元々が一般人の彼からすれば生きるために働くことに抵抗はなくても、貴族社会のどろどろしたものは耐えられないだろう」
「最恐の暗殺者とか生まれそうで怖いですね」
「……やっぱり警戒対象のままにしようか」
「そのほうがよろしいかと。彼がどれだけうまく立ち回っても、だめなときはだめでしょうから」
個人の力じゃどうしようもない流れというものもあるしね。
「とりあえず、起こりそうなことに合わせて対策を考えておきますか」
そう言うと、女将と対策をまとめることにした。
「……これって本来は箱庭の管理をしている創造神の仕事なんだけどなぁ」
なんか納得がいかない。
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