第22話 暗殺しない転生者05

「まったく、ひどい目にあった」

「本当よねぇ。なに考えていたのかしら、あいつら」

「研究職の人間なんて、知識欲の塊ってだけでしょ」

「・・・(だったらいいんだけどな)」

「ん?なんか言った?」

「いや、なんにも」

 あのあと、遺跡の調査は正式に中止になった。

 遺跡は完全に崩れていたし、持ち出された調査結果から相当やばいものがあるとわかったため、国の管理下で厳重に封印されることとなった。

(あの調査員たち、なんか知っていたっぽいんだよな)

 死んだ調査員たちは一時撤退すると決まったとき不自然なまでに反対をしていたのが気になっていた。

 それに調査の中止と遺跡の封印決定についてもずいぶんと揉めたと聞いた。

 一部の貴族が強く反対したらしいが、最後は国王陛下が封印を決定したそうだ。

 遺跡が完全に崩れてしまったため最深部までもう一度発掘するにはどうしても掘り起こす必要がある。

 流石にそこまでの費用は捻出できないのだろう。

 それに、今回の発掘調査で遺跡の最深部にあるものが相当危険なものだとわかったのだ。

 遺跡が崩れたことで結果としてだが中のものは再封印されたのだから、無理をして発掘する必要はないと判断したのだろう。

 もっとも、遺跡の最深部ははずだから発掘してもなにもないんだけどな。


「御影くん、こんなやばいスキル習得してどうするの?」

「えっと、一応なにかのときの備え?に欲しいなって」

 そのスキルを習得したいといったとき、店長さんはスキル構成を見たとき以上にドン引きしていた。

「指定した範囲の物質を完全消滅させるスキルなんて、いったいなにに備えたら必要になるんだい?」

「例えば核廃棄物みたいにあるだけで問題なりそうなものを消したいときかな?」

 元いた世界では処理ができなくて封印するしかない有害物質の塊みたいなものが存在していた。

 転生する世界でも同じように作ったのはいいけれど処分できないようなものが存在する可能性がある。

 そうでなくても爆発物などを解体している時間がないときなどに使えれば、被害をなくすことができる。

 この他にもやばい魔物とかを相手にするときなんかに使えれば防御を無視してダメージを与えられるので切り札として持っておくと使えると思ったわけだ。

「なるほど・・・君が習得している他のスキルと合わせて使えば活用の幅が広がるね。でも、制御するのに結構面倒だよ?特にピンポイントで使用するなら魔力制御系のスキルが相当高くないとだめだし大変だよ?」

「まぁそのあたりは実際にやって難しかったらまた考えるってことで」

「分かった、それなら集中して練習できるように他のスキルを先に習得する方向でスケジュールを調整しよう」

「お願いします」

 結構な時間をかけることとなったが、代わりに求めたスキルの習得は無事完了した。

 まぁ、魔法関係のスキルも充実した結果魔道具とかを作るスキルもおまけに身についたので、武器や道具を用意するのに役立ってたりする。

 俺は遺跡を脱出する際、遺跡の構造を把握するとともに最深部の封印されているものがあると思われる付近一帯をこのスキルで完全消滅させておいたのだ。

 なので、反対した貴族たちが再発掘をしても何も出ては来ないはずだ。 

(残った問題は遺跡の封印に反対した貴族たちかな。彼らが遺跡に封印されたものについて、なにか知っていると考えるのが自然か。正直、面倒事は避けたいところだけど、調査に参加した手前放っておくのも気持ち悪いしな)

「なぁ、ふたりとも。ちょっと頼みたいことがある」

「いいよ~、できることなら報酬次第で手伝うよ」

「ん~、あたしもまだ仕事入れてないから大丈夫だよ」

「すまんな。移籍調査で死んだ調査員と発掘中止に反対した貴族について洗ってほしいんだ」

 まぁ、乗りかかった船だ、飽きるまでは調べてみるかな。

 

 この判断が後に国を巻き込んだ厄介事に発展することになるなんて、このときの俺は考えもしなかった。

 適当に調べた結果をシャロンたちを経由してまともな貴族に流せばいいだろうと軽く考えて行動した判断を俺が後悔することになるのはまた別のお話。

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