第19話 暗殺しない転生者02

「えっと、つまり俺は手違いで死んだと。お詫びにあたらしい世界に特典付きで転生さえてもらえると」

「理解が早くて助かるよ」

 気がつくと俺は元居た廃村ではなく、変な居酒屋の前に立っていた。

 ここはどこなのかと中に入って店長さんに聞いたところ、自分が死んでいることを告げられた。

 俺の名は嘉神 神影《かがみ みかげ》。

 秘境巡りなどが趣味のちょっと変わった大学生だった。

 その日、いつものようにとある山の中にある廃村を探索していたのだが、雲一つない晴天の中に雷に打たれて死んだらしい。

 なんでも、神様が人の住んでいない山奥の廃村に落とした神雷がたまたまその廃村にきていた俺にあたってしまったらしい。

 しっかり確認してほしかったものだが、本当なら人がいないはずの廃村に俺がいたこと自体想定外だったとか。

 神様も全知全能ではないそうで、時々こう言うことが起こってしまうらしい。

 まぁ、そんなこんなで新しい箱庭(ここでは世界のことを言うらしい)に転生させてもらえることになったのだが、お詫びついでに少しだけ能力を上乗せしてもらえることになった。

 といっても、ここではもらえると言うよりは自分で獲得することになるらしい。

 早速やってみたいことを考えて手に入れたい能力をまとめてみたんだけど・・・。

「・・・暗殺者? え、君殺人願望でもあるの?」

 出来上がった構成を見た店長さんが軽くドン引きする出来になっていた。

「いや、そう言うのはないです。ただ、やりたいことを考えたらこう言う構成かなっと」

 転生する先の箱庭はいわゆる異世界転生の定番である剣と魔法の世界らしい。

 魔王と勇者がいるような世界ではないので世界が危機に瀕していると言うことはないそうだ。

 英雄には興味がないし、貴族になっても面倒なことになる未来しか想像できなかったおれは、迷わず冒険者になることにした。

 探索に役立ちそうな能力を中心に構成してみたのだが、斥候向け構成にしたつもりが、気づけばどうみても暗殺者になっていた。

「いや、魔物も怖いけど一番怖いの人でしょ? 探索時や対人戦での火力不足を補えないかと思って考えたんですけど・・・」

 斥候系の能力として罠解除スキルや鑑定、隠蔽系などを中心に撮ったあと、火力不足を補うための不意打ちや薬物を使った攻撃能力、それらを強化する闇魔法の習得など気付けば暗殺者と見間違えるような構成になっていたのである。

「異世界転生のテンプレだと、よく囮にされて死ぬ話とかあるでしょ? その辺のフラグをへし折るにはソロでもそれなりに戦えるタイプじゃないとダメかなっと。それでいて、強さを偽装できるスキルがあれば生きていけるかと思って」

「あぁ、だから暗殺者みたいになったのね、偽装できるように」

 対人戦に備えた状態異常無効能力や記憶の操作系能力(催眠術のような物を含む)など、偽装用の能力構成が暗殺むきになってしまったのはある意味当然なのかもしれない。

「扱いを間違えると、大変なことになるからその辺りの経験も積んだほうが良さそうだね」

 曰く、加減を間違って人格を壊してしまったり、そこまで行かなくても洗脳じみたことをしてしまうことがあるので能力の使用は要注意との助言を受けた。

 結局、酒場にはかなり長い期間滞在することになったが、おかげですっかり熟練の暗殺者になってしまったのだった。

 いや、暗殺者になるつもりはないんだけど、果たして冒険者としてやっていけるのやら。

 

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