第20話 暗殺しない転生者03

「やっほー、ミカゲ」

「よう、カレン」

 冒険者ギルドで依頼を確認していると知り合いが話しかけてきた。

「聞いたよ、シャロンの依頼を受けたんだって?」

「あぁ、なんか急ぎの仕事だったらしいからな」

「ブーブー、あたしの仕事は滅多に受けてくれないのにどうしてシャロンの仕事は受けるかな」

「お前の仕事は基本やばいものしかないからな」

 カレンは一見俺と同じ斥候系の冒険者なのだが、その実暗殺者ギルドの幹部候補だったりする。

 ランクアップの試験で護衛依頼を引き受けた時に一緒に仕事をしたのだが、その時からことあるごとに暗殺ギルドに勧誘を受けている。

 ギルドの性質上、依頼というのは当然暗殺関係である。

「いくら俺の能力がそういうのに向いているからといって、そっちの仕事を率先して受ける気はないんだよ」

 稀に暗殺者からの護衛とかの仕事があるのでそういうのであれば手を貸さないこともないのだが、こいつが持ってくるものは基本暗殺である。

 まぁ、対象がクズである点がまだ救いではあるのだが。

「つれないなぁ。ま、無理強いするつもりもないし。うちはいつでも歓迎だからね」

「はいはい」

 カレンをあしらいつつ今日はいい依頼がないと思っていると、シャロンがこっちにやってくるのが見えた。

「あー、いたいた。ミカゲ、ちょっといい?」

「ん?どうした、シャロン」

「仕事のお誘いなんだけどいいかな」

「ん? また変な依頼じゃないだろうな」

「大丈夫、今回は遺跡の調査だから」

 そう言いながら俺の右腕に抱きついてくる。

「シャロンさん、あたしには挨拶はなしですの?」

 シャロンに対抗するように左腕にカレンが抱きついてくる。

「あ、カレン、いたのですね」

「あ"?」

「なによ?」

「待て待て、2人とも。こんなところで殺気立つな」

 仲が悪いわけではないのだが、この2人は顔を合わせると喧嘩している印象がある。

 俺がいないところではそこまでではないらしいのだがなんでなのやら。

「シャロン、遺跡の調査って話だがお前が参加しているんだろ? 複数の斥候がいるのか?」

「結構大きい遺跡が見つかったみたい。そこそこ深い階層だからランクの高い人を探してるの」

 なるほど、戦闘能力もそれなりにないとダメってことか。

「ふむ・・・カレン、お前も参加しないか?」

「あたし? ・・・今は依頼はないし、行けるとはおもうけど」

「いや、あんたはいらないし」

「高ランクの斥候職集めてるんでしょ? 戦力は大いに越したことはないはずよ」

「カレンのいう通りだ、シャロン。能力で見るならカレンは使える」

「それはそうなんだけどね(お邪魔虫はいらないんだけどな)」

「仕事はちゃんとするわよ(抜け駆けなんてさせますか)」

「決まりだな、受付に行ったら話は通るのか?」

「えぇ。明日の朝、ミーティングして明後日出発の流れになってるわ・・・いけそう?」

「問題ない」

「あたしも問題ないわ」

「じゃ、よろしく」


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