第15話 そして転生者は出会う
「・・・なにこれ」
店長さんから精霊との契約がうまくいかない件の原因がわかったとの報告があった。
詳しくは教えてくれなかったけど、とりあえず契約ができるはずだと言われたので早速召喚をしてみたところ、信じられない光景が広がった。
召喚陣から精霊があふれるように現れて、契約を迫ってきたのだ。
押しつぶされるんじゃないかと思われたところで、風の上位精霊が押し寄せてきた精霊たちを押し返し、遅れてきたほかの上位精霊たちが一喝して押さえ込んだ。
その後、上位精霊たちが状況を説明してくれたのだが、これまではとある問題(内容はやはり教えてはもらえなかった)があって契約ができなかったが、解決したので契約を勧めたいとのことだった。
ただ、今の私だと、中位精霊までが限界であり、またあまり多くの精霊と契約することは難しいらしい。
そこで、上位精霊の眷属に当たる中位精霊と契約することを勧められた。
契約した精霊が眷属とする精霊は自然と契約関係になるので、個別で契約しなくてもまとめて契約したことになるそうだ。
「無論、個人的に気に入った精霊がいるのであれば、個別に契約してもらえると助かる。その方があの子たちの成長につながるのでな」
精霊は人とともにあることで成長が促されるらしい。
自然と力を使うことが増えるので、結果力の加減がうまくなるらしい。
「とりあえず、みんな契約してくれるってことでいいんだよね?」
「うむ。もしやりたいことがあるのであれば、それに適した精霊を紹介しよう」
「それは助かるわ」
精霊の手を借りることで複雑な魔道具を作り出すことができるのだが、精霊ごとにできることに違いがあるのだ。
このため、契約した精霊に合わせて技能を習得するつもりだったのだが、契約が全くできなかったため、基本的な技能しか習得が進んでいなかった。
「とりあえず、今日はやりたいことができる精霊を探すところから始めようかな」
とりあえず、私はやりたいことを講師役の人と相談することにした。
そこからは忙しい日々が続いた。
契約ができなかったことで定まらなかった自身の育成方針が決まったことで、やることが一気に増えたからだ。
加えて、店長さんからの忠告をもとに取得する技能を増やした結果、酒場で過ごす期間が大幅に増えることになった。
おかげで運動音痴ながらも体力はついたし、なんとか上位精霊との契約までできるようになった。
シロも成長してなんとか護衛が務まるくらいになったし、私のサポートができる使い魔のような技能も習得してずいぶんと楽になった。
転生時に持って行くお金や道具なども揃い、ようやく転生するとなるまでに何年もの時が過ぎていた。
そして、ついに転生する日がやってきた。
「ずっとここにいてもよかった気がするけど」
契約した精霊たちが最近早く転生するように勧めてくるようになった。
どうも、私と契約したい精霊がいるらしいのだがいろいろ事情があって転生先でないと会えないらしい。
正直、今の段階でもやりたいことができるようになってるので、これ以上精霊と契約する意味は多分ないと思う。
「けど、わざわざあの子たちに頼んでまで会いたいって行ってくる精霊にも興味はあるんだよね」
私がここに来たときに聞いた声。
ここで過ごしているときも時々聞こえたけれど、多分会いたいというのはこの主なんだと思う。
若干、面倒くさい性格をしている気がするけれど、そろそろ行かないと待たせすぎかなと思っている。
店長さんにそう言うと、「精霊の一生から見ればこの程度の年月なんて昼寝をする程度の時間だから気にしなくていい」って笑っていたけれども。
「ま、行けばわかるでしょ」
こうして、私は新たな世界へと旅だった。
そこで、やたらと愛の重たい精霊王と出会って、苦労することになるんだけどそれはまた別のお話。
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