第16話 閑話~店長と女将の会話~
「なんとかなったかな」
「お疲れ様です、店長」
そう云って女将はお茶を出してくれる。
「・・・あの子、大丈夫かなぁ」
「精霊王の加護がありますから、少なくとも危険はないでしょう・・・危険は」
「その精霊王が頭痛の種なんだけどね」
愛が重い精霊王のおかげでここでの訓練が長引いてしまったのだ。
訓練期間が延びたのであっちの教育もしておいたので大丈夫だとは思うけれど、心配はつきない。
「まぁ、あの子の訓練の方もしっかりやったから大丈夫だと思うけどね」
「むしろ、訓練しすぎたと思いますよ」
そうなのだ。
精霊王がいらないことをしたおかげであの子自身の能力がちょっと大変なことになっている。
チート能力こそ従魔や精霊召喚だけではあるが、それ以外の能力も軒並み高い物になっている。
特に生産職の分野では一流にはとどかないが十分優秀な能力を一通り持っているのだ。
本人は生活環境を自分で整えられる程度の腕と思っているかもしれないが、普通は一つか二つくらいのもので、なんでも作れる腕というのはそれはそれでチートなのだ。
加えて、精霊王を筆頭にあまたの従魔を従えている状況は明らかに目立つだろう。
そうなれば、悪意を持つものが寄ってくるのは目に見えている。
「あの子になにかあれば間違いなく精霊王が怒って暴れるのが目に見えている。地図が変わらなければいいけれど」
「あちらに行ってしまった以上、心配してもしかたがないのでは?」
「ま、これは箱庭を管理している創造神の仕事か」
転生してしまった後はもうこちらから干渉はできない。
それは転生先の箱庭を管理している創造神であっても基本変わらない決まりだ。
「それよりも、転生先の箱庭からのこちらへの干渉について考えませんと」
「そっちは次の創造神たちの会合で議題にあげるようにしよう。こんなことが頻発されては酒場の運用に支障が出る」
転生者による転生先でのトラブルを未然に防ぐのがこの酒場の役割なのに、転生先の存在によってトラブルを誘発されるのは大問題である。
「問題点が見つかったことが幸いだと思うこととしよう」
「そうですね」
自分の仕事はこの酒場の運営であって、箱庭側の問題は管理する創造神のお仕事だ。
今回の件はしっかりあの箱庭の創造神に文句を言うことにしよう。
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