第2話 はじまりの転生者たち02
「とりあえず、君たちの転生先について説明しようか」
そういって店長さんは紙を手に説明を始めた。
どうやら、僕たちの転生する世界には魔法があり、おとぎ話に出てくるような精霊や亜人が存在するそうだ。
反面、魔法で日常のことを補えるため科学技術の方はあまり発展していない。
文明レベルでいえば、僕たちの世界でいう中世よりの近代といったところかな」
「比較的に安定はしているけれど、治安は君たちのいた国とは比較にならないくらいに悪いから注意が必要だよ。夜に女の子の一人歩きなんて御法度だ」
といわれても実感がわくのは実際に経験してからだろうなとおもっているとそういうことも一応ここでは経験できるという。
「転生先で世間知らずすぎるのも危険だからね。最悪、転生してすぐに貴族に殺されることもあるし」
「うわぁ・・・」
貴族なんてもうほぼいない時代に生きていたし、王室なんかに関わることもないぼくらからすると文字通り異世界の存在だ。
そんな人たちとは是非とも関わらずに生きていきたい。
「貴族だけじゃない、精霊や亜人たちも独自の文化と価値観を持っているから、それを理解して付き合わないと大変なことになる。まぁそのあたりは一通り勉強してもらうよ」
その後も、店長さんの説明は続いた。
大切なことなので花梨と僕は真面目に聞いていたけれど、さすがの情報が多すぎた。
少し休憩させてほしいと言いかけたところ、奥から女性が出てきて店長さんをたしなめる。
「店長、少し休憩を挟んだ方がいいですよ。二人とも情報が多すぎて疲れてしまっています」
「む、これは気がつかなくてすまない。たしかちょっと大変だったね」
「いえ、大事なことなのはわかってますから」
「大事なことだからこそ、しっかり理解できるようにしないとだめなんですよ。なにか甘いものでも出しましょうか」
そういうと、女性は奥(おそらく厨房になっている)から新しい飲み物とお菓子を持ってきてくれた。
「ありがとうございます、えっと・・・・・・」
「自己紹介がまだでしたね、この酒場の副店長で、宿の方の女将です。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「店長、休憩がてら宿の説明を少ししても?」
「あぁ、よろしく頼む」
「では、簡単に説明しますね」
女将の話は主にこの酒場で訓練を受けているときに寝泊まりする宿の話だった。
店長の説明通り、最初に決められた滞在期間の間は宿代がかからない。
宿の施設も普通に問題なく使えるが、あくまで必要最低限らしい。
たとえるなら、学生寮のようなものだ。
ただし、酒場で依頼を受けるなどして稼いだお金を支払うことでよりよいもてなしを受けることができる。
「滞在期間が終わると宿代をいただくことになりますので、余裕が出るまでは追加料金が必要なことは我慢されることをおすすめします」
細かいことはまた部屋に案内するときに説明しますと告げると、女将は宿の方に戻っていた。
「疲れているのに気づかなくてすまなかったね」
「いえ、こちらこそ気を遣っていただいてすみません」
「とんでもない。死んだばかりで混乱している君たちに気を使えなかった僕が悪いんだ。とりあえず、細かいことはまた改めて説明するとして明日からの予定を説明しておこうか」
そう云って店長は説明を再開した。
必要最低限の説明が終わると、最後にどんな能力を身につけたいかを考えておくようにと言われた。
すべてを聞くことはできないが、可能な範囲で要望に添った訓練を用意してくれるそうだ。
「助言はするけれど最後に決めるのは君たち自身だ。後悔しないようにしっかりと考えてほしい」
店長さんの話が終わった僕たちは女将さんに連れられて宿の方に移動した。
部屋は個室と相部屋のどっちがいいかと聞かれたので個室でと答えようとしたのだけれど、花梨に相部屋がいいと押し切られてしまった。
一人は不安なのはわかってるので、軽く抵抗しただけで相部屋を受け入れることにした。
無論、布団は二人分用意してもらった。
花梨は不服そうだったけどそこはまだ譲れなかった。
食事とお風呂を済ませると二人で今後のことを話し合うことにした。
店長さんにも言われたけれど、ここにいられる時間は限られている。
転生してしまえば頼れるのは自分たちだけだ。
今度は花梨をちゃんと守りたい、そのための強さを僕は身につけたかった。
「ねぇ花梨。せっかくだから滞在時間を延ばして納得のいく能力を身につけるのはどうかな」
「そうね、店長さんの話だと時間がかかるけど頑張ればほしい能力が身につけられるって話だし」
勇者なんかになりたいとは思わないけれど、平穏に暮らせる程度には力を身につけたい。
お互いにやってみたかったことや身につけたいと思っていた能力を書き出しながら、花梨と相談して方針を決めていく。
ある程度まとまったところで後は店長さんに相談しようという話になったところで、僕たちは休むことにした。
途中花梨が布団に潜り込もうとするのをたしなめながらその日はお互いの手をつないで眠りについた。
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