転落した転生者
第5話 転落した転生者(悠視点)
「どういうことだ? どうしてこんなに報酬が少ない!?」
仕事を終えて、宿の食堂(という名の居酒屋)で時間を潰しているとそんな声が聞こえてきた。
聞き覚えのある声だと受付の方を見ると、見知った顔が見えた。
「依頼された魔獣の素材はそろっているはずだ。それどころか、余分に持ってきているのにどうしてこの金額なんだ! 以前はもっと高かったじゃないか」
「だから説明しているだろう?確かに依頼の素材はそろっているが、解体がうまくないせいで依頼主が求めている品質のものが少ないんだ。数を納品してくれているから、質がいいものを集めて依頼の方は達成できるけど、残りはほとんどお金にならないんだよ」
彼らの前にある納品素材に目を向けると、店長の言うとおり質がよくないのがわかる。
解体に使ったナイフがよくなかったのか、毛皮の所々に傷があったり穴が空いたりしている。
あれじゃ加工しようにも使い道が限られてしまうので売値はよくないだろう。
食ってかかっている幼馴染みもそのことはわかっているのだろうが、少しでも報酬を増やしたいのか、なんとかならないかと食い下がっている。
なだめるべきかと悩んでいると、もう一人の幼馴染みが止めに入った。
「信士、そこまでよ」
「陽菜!」
「店長さん、報酬はその金額で大丈夫です」
「待ってくれ、陽菜」
「いい加減にしなさい。元はといえばあなたがちゃんと道具の手入れをしていなかったのが原因でしょ」
「それは・・・」
「店長さんはちゃんと理由を説明してくれているし、買い取り価格も適正価格よ。これ以上は失礼だわ」
「・・・」
原因が自分にあることを指摘されて勢いを失った信士が沈黙しているうちに陽菜は依頼の完了処理を済ませてしまう。
陽菜は手早く報酬の分配をすると、宿の方に戻っていった。
これは後で愚痴られるなぁと考えていると信士と目が合った。
見られていたことに気づいたのか、こちらをにらんでいるが僕は全く関係ない。
たまたまここで
どうしようかと思い、軽く手を振って挨拶したら不機嫌そうに宿の方で歩いて行った。
僕がPTを抜けてから、信士たちは想像以上にひどいことになってる気がする。
陽菜は大丈夫だろうか。
僕と陽菜、信士の3人は幼馴染みだ。
陽菜と信士は生まれた頃からだが、僕は小学校に上がった頃に転校してきてからになる。
信士と僕は親友だったが、お互いに陽菜が好きだとわかってからはライバルのような関係だった。
陽菜の方は信士のことを幼馴染み以上に思ってはいなかったようで、最終的には僕と陽菜が付き合うことになった。
しばらくは気まずかったが、信士が他の子と付き合うようになってからは落ち着いていた。
もっとも、信士はそれ以降付き合っては別れてを繰り返していたようだったが、僕たちの中は良好だった。
そして、高校の卒業旅行に出かけた先で事故に遭い、僕たちはこの酒場にやってきた。
なんでも、本来死ぬはずではなかった運命がずれて、死んでしまったらしい。
その補填として、能力を上乗せしての転生をさせてもらえると言うことでここで働くことになった。
その頃からだろうか、悠の様子が少しずつおかしくなり始めたのは。
しばらくして、悠は僕をパーティーから追い出した。
いろいろとそれらしいことを言っていたが、用は役に立たないから出て行けという話だった。
陽菜は反対していたが、反論しにくい理由を並べていたことと、他のパーティーメンバーにはすでに根回しが終わっていたらしく、結局そのまま離脱することになった。
まぁ、パーティーの方針と僕のやりたいことが若干ずれてきていたので、追い出されたこと自体は気にしてないなかった。
気がかりなのはパーティーに残った陽菜だ。
いっしょに抜けようとしていたが、信士と残ったパーティーメンバーに引き留められたのだ。
今回のことで陽菜は信士のことを見限った様子だったが、僕だけでなく自分まで抜ければパーティーが立ちゆかなくなるのがわかっていたため、とりあえず後始末をすると言っていたけれど、先ほどの様子を見るかぎり苦労しているようだ。
そんなことを考えていると、陽菜が宿に戻って身支度を調えた陽菜がやってくるのが見えた。
さて、お姫様のご機嫌を取りますかね。
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すみません、仕事が急がして更新ができませんでした。
ストックがない状況で進めているので更新が不定期でになります。
ただ、話が短いながらも完結してから投稿するようにしていますので、よろしくお願いします。
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