残る転生者と旅立つ転生者

第9話 二人の転生者

「えっ?みなとってもう転生するの?」

「あぁ、もうすぐ研修期間も空けるからな。とっとと転生したい」

 そう言ったのはパーティーを組んでいる親友の神楽かぐらだった。

「一つの所にとどまってるのは性に合わないからな。欲しい技能はとりあえず手に入ったし、ここにとどまる理由はもうほとんどねぇ」

「そっかぁ・・・」

 神楽は生前からよく旅行に行っていた。

 長期休暇になれば、ふらっとどこかに行ってしまい、音信不通になることも多かった。

「おまえは俺に付き合わなくてもいいぞ。やりたいことがあるんだろう?」

「俺だけ残っても・・・」

「まだ気にしてんのか?あれは俺が好きでやったことだ。おまえの責任じゃねぇ。というか、おまえも被害者じゃないか」

「それはそうなんだけどね」

 僕たちはある事故の巻き添えでここにやってきた。

 本来は巻き添えにならないはずだったらしいのだが、どうも手違いで巻き込まれたらしい。

 湊は僕をとっさにかばったため、いっしょに死んでしまったが本来ならば、彼は死ぬことはなかったのだ。

「といってもこまったな。湊と行くつもりで技能をとってたから、別々に転生するとなるとちょっときついかも」

 湊に甘えるつもりはないが、それでも湊が持ってないだろう技能を補う形で計画していたので、湊がいないとちょっと心許ない。

「そういうことか。とってる技能の種類がなんか微妙だと思ってたけど、俺の技能と合わせて考えていたのか」

「うん、個別にそろえると大変だから、あえて元になるものや足りないものを補える形でとってたんだ」

「そういうことは早く言えよ」

「湊を頼りにしすぎるのもどうかと思ってたから、自分なり考えたつもりだったんだけどね」

 湊は一人旅をよくしていたためトラブルの対処がうまく、なにかあったときつい頼ってしまうことがあった。

 親友としてはそれではダメだと思って自分でできることはやろうとしたのだけれど。

「結局湊頼りになってることに気づいてなかった自分を殴りたい」

「頼りすぎないようにしていたことはいいことだと思うぞ、ツメが甘かったようだが」

「・・・」

「まぁ、俺もスキルの相談とかを受けたときにもう少しちゃんと確認しておくべきだった。俺を基準に考えすぎていたわ」

 湊の基準だと、問題がない技能の構成でも、俺がやるとなると不安が残るのだ。

 湊が持っていないスキルをとっておけば、役にたたえるのではないかと安易に考えて予定をちゃんと聞いておかなかったのが失敗だった。

「でも、湊が行くというなら無理に引き留める気はないよ」

 さすがに俺の都合に湊を付き合わせるのはおかしい。

「いや、そのあたりはしっかり話し合っておくべきだった。いつものノリで後からでも合流できるとか簡単に考えていたが、転生先だと簡単に連絡は取れないんだったな」

 僕らが転生する予定の世界の文明水準は大体元の世界の中世くらいだ。

 電話なんてないし、手紙だってまともに届くかどうか怪しい感じだ。

 お互いの居場所がわかっていて離れるのであればまだ連絡のとりようもあるだろうが、別々に転生してしまえば、同じ世界であっても再びあうことは難しいだろう。

「・・・店長に相談してみるか?」

「店長に?」

「あぁ。ここでなら様々な技能が手に入れることができる。俺とおまえが別々に転生しても、合流できるような技能あるいはそれに準ずる特典チートを手に入れよう。そうすれば合流はできるはずだ」

「なるほど、それならなんとかなるか」

「あぁ、俺も予定を変更して手伝う」

「いや、俺のわがままなんだ。それくらいは」

「これくらいは手伝わせてくれ。俺たちは親友だろ?」

「湊・・・」

「なにはともあれ、まずは相談だ。もし、だめだったときのことも考えないと」

「そうだね、ソロでもやっていける技能を身につけないと」

「そっちも後で相談しよう、まずは店長だ」

「了解」





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る