第13話 遂に
「遅れてすみません」
「あぁ、話は聞いてる。早く席につけー」
麗奈が教室に入ってくる。
今は5限の終わり。随分長い事あそこに居たんだな…。
空が麗奈を見ていると、こちらを1度見ると、直ぐに視線を変え、席に座った。
その後麗奈は、いつもよりも何処かボーッとしてる事が多かった気がした。いつも、先生に当てられたら直ぐに返事をして立ち上がるのだが、今日は2回名前を言われて返事をする事が殆どだった。
…まぁ、答えはいつも通り分からないみたいだったけど。
キーン コーン カーン コーン
「氷川さーん!!」
授業終了の合図が鳴った瞬間、1人の女子が教室に入ってくる。
あれは確か…
「おい、坂本…まだ授業は終わってないぞ」
「えー! でももうチャイム鳴ったじゃないですかぁー…」
「はぁ…まぁ確かにな、じゃあこれで終わるぞー」
先生がそう言うと、立ち上がり礼をして、授業が終わる。
「ねぇねぇねぇ!! 貴方が氷川さんだよね?」
「そ、そうですけど…」
「私、
坂本 愛梨、この高校のバスケ部の2年生。
1年生からレギュラーを任せられている期待のエースだ。
「…すみません。大丈夫です」
「えー! 何で? 入ろうよ!!」
愛梨が麗奈に押し迫る。
「……私、他の部活に入ろうと思ってるので」
麗奈はそれに笑顔で対応している。
…氷川さん、バスケ部入らないのか。意外だな。てっきり中学校と同じバスケ部に入るとばかり…。
空が2人の様子を見ていると、
「空ー!! 行くぞー!!」
「は?」
ガタッ
雄太郎が空の腕を掴み、席から立たせる。そして空は雄太郎に廊下まで引っ張られる。
「待てって! 何処に行くんだよ!!」
まだ、氷川さんがどうするのか…って何を気にしてんだ僕は。僕が氷川さんを気にする必要なんて…。
「何処って…決まってるだろ!! 今日こそ可愛い外人美少女を見に行くんだよ!!」
雄太郎の目がギラギラと輝いている。そして空の腕を引っ張ると、隣のクラスまで連れて行かれる。
お、おぉ…。雄太郎のこんな顔、初めて見た。どんだけ見たいんだよ。
「何処だ!! 可愛い外人美少女は!?」
ガラッ
雄太郎は凄い勢いで扉を開ける。
窓際では何十人もの人達が1つの席に群がっていた。
「あそこかー!!!」
「お、おい!」
雄太郎が人の波を掻き分けて、ドンドンと奥へと進んでいく。
ったく…もうアイツの事をほっといて教室に帰るか。早く席に戻って寝よう…。
空はその人だかりから背を向け教室から出ようとすると、
「うぉぉぉーっ!?!」
雄太郎の叫び声が聞こえてくる。
何を叫んでいるんだ、アイツは。
空は一瞬立ち止まるが、余計な体力を使うと考え、もう1度教室から出ようとする。
本当に……こちとらあまり寝てないん
「そーーーらーーー!!!」
!?!?!?
「早くこっちに来いよー!!!」
雄太郎の声が響き渡り、その周りにいる人達の視線が空に突き刺さる。
……余計な事言うなよ。
「めっちゃ凄いから!!」
「あの…私なんて凄くないよ?」
「いや! こんな凄い人早々いない!!」
何を言い合っているんだ、アイツは。
ていうか、アイツの言語には"凄い"しかないのか。
あと…何処かで聞いた様な声が聞こえたな…。
集まっていた人だかりが、人1人通れるぐらいの道を作る。
…はぁ。
空は大きく溜息を吐くと、嫌々その道に入って行く。
…これで凄くなかったら、雄太郎のYシャツこの場で破り捨てる。
空がそんな決意を胸に秘めて、人だかりの中心へと行く。
「え!!」
「え…」
そこにはこの前手術した人の娘、銀髪の女子がいた。
「…これは凄いな」
「だろ!!!」
この時、僕は雄太郎の出すドヤ顔を無性に殴りたくなった。
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