第3話 保健室で
「はぁ、疲れた」
空は今、昼休み中に保健室へと訪れていた。
「空君、今日はいつも以上に疲れてるね。何かあった?」
保健室の先生。
「実は今日転校してきた生徒が、昔の患者だったんだ」
「うわっ、じゃあバレちゃったの?」
「いや、まだバレてない。でも毎日外を見続けるのはキツイんだ」
保奈美先生は、僕がマジックドクターだと知っている、数少ない人だ。
「どう言う事?」
保奈美先生は首を傾げる。
「実は…」
空は掻い摘んで、授業の事を話した。
「へぇ〜、真面目な子じゃない!」
「僕にとっては最悪だけど」
「まぁまぁ、そう言わないで!」
保奈美先生は笑って言う。
「ほら!いつも通りベッド貸してあげるから!」
「それに関しては感謝するよ」
僕はすぐにベッドに潜り込んだ。
保奈美先生は僕の事情を知ってる為、ベッドが空いている時ならば、昼寝の為にベッドを貸してくれる心優しい先生なのだ。
はっきり言ってこの人には頭が上がらない。この人のおかげで僕はこんな生活を過ごせているのだから。
空は保奈美先生に感謝しながら、すぐに眠りについた。
「ふわぁ〜、ちょっとスッキリ。さてそろそろ行くかなっと…」
空はベッドから起き上がる。
ガラガラガラ
「失礼します」
どこか凛とした声が聞こえてくる。
ま、まさか…!?
空は閉まっているカーテンの隙間から、入り口の方を覗き込む。
「はーい、ん? 見ない子ね? どこのクラスの子かしら?」
「はい、今日2年3組に転校してきました。氷川 麗奈と言います。よろしくお願いします。」
「ん? 今日転校?」
保奈美先生は首を傾げる。
うぉぉぉーっ!? なんで立て続けにこんなのが続く!? こんな偶々保健室に来るなんて…!!
空が嘆いている間にも、時は淡々と流れる。
「はい、そうです。此処に皆月君が居ると聞いて来たのですけど…いらっしゃいますか?」
パッ!?!?
ガタガタガタッ!!
「…あれ? 今物凄い音がベッドの方から?」
「あー、えっと、気にしないで良いわ。私猫を飼っているの」
「ほ、保健室でですか!?」
ほ、保奈美先生も絶妙に焦っていらっしゃる!?
「あ、いや、えーっと…」
「とても良いですね!! 私猫さん大好きなんです!!」
「「え?」」
「あれ? 今声が重なって聞こえ
「気の所為よ!!」
保奈美先生がこちらを睨んでくる。
ご、ごめんって!! まさか保奈美先生が言った事が裏目に出るなんて思わないじゃん…。
「よかったら見せて貰っても良いですか?」
「わ、悪いけど、人見知りな性格で怯えちゃうから…」
保奈美先生がうまく言いくるめる。
流石、保奈美先生! 断って! 断って!!
「そうなんですか…じゃあ、私その子に慣れてもらうまで此処に通います!!」
「「えっ!?」」
「また声が…」
「気の所為って言ってるでしょうが!?」
保奈美先生が先程とは比べ物にならない目で此方を見てくる。
いや、本当にごめん…。
でも、此処に通われたら、僕の安住の地がなくなっちゃう。頼む…断ってくれ! 保奈美先生!!
「ほ、保健室に来るのは体調の悪い生徒だけ。体調の良い子はダメよ? そ、それにしても何で皆月君を探しているのかしら?」
保奈美先生が話を変える。
はっ! そうだった!?
何で氷川さんは僕の事を探してるんだろ?
「じ、実は皆月君と少しお話をしたくて…ですね…」
あ、あの氷川さんがモジモジしていらっしゃる。あの見た目でモジモジされるとギャップが…。
「お話、ね〜?」
保奈美先生は僕の方を向いてくる。
な、何だそのニヤニヤ顔は!?
「皆月君起きてー、お客さーん」
ひぃやぁぁぁぁぁ〜〜〜っ!!!
あの人! 遂にめんどくさくなって僕に押し付けて来たのか!?
許せない!! 後で睡眠薬投与して、仕事を進ませなくしてやる!!
空は悲痛な心の声を出しながら、頭を抱える。
「み、皆月君、いますか?」
ダラダラダラダラ
あ、汗が止まらない…。
麗奈がベッドの方に近づいてくる。
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