第2話 天然? それともアホ?
「〜だから、〜であるとして…」
授業が行われる。
そして今…麗奈は転校してきて初の授業だ。もちろん、教科書も持っていない訳で…、
「皆月君、寝ちゃダメですよ」
隣のくっつけた隣の机から凄い小声で話しかけて来る訳で…。
空はバレない様に寝たフリを続ける。
此処で僕の顔を見られたら僕が手術した奴って…マジックドクターだってバレるかもしれない!! そしたら今よりもっと忙しくなって…。
空の顔から血の気が引く。
空は全力で寝たフリを続けていると、
「皆月君…」
麗奈が肩に触れ、僕を揺らす。
いや、こんな真面目な子だったんだこの子!! 偉いけど今はやめて欲しい!!
空は心の中で泣き叫ぶ。
すると、
「…ーー」
空は後ろから何か声が聞こえた気がした。
…あれ? なんか皆からの視線が痛い気がする。
僕の席は1番前の窓際。
実は後ろより前の方が寝ている事が先生からバレないから、いつも黒板が見えないという名目で此処に立候補している。だが逆に言えば僕が何かをしていると、生徒からは丸見えな訳で…
空は麗奈にバレない様に、後ろを見る。
「チッ! キメェ!」
「クソッ! 呼吸すんな!」
「空って実は足臭いんだぜ…」
…おいおい。どんだけ妬んでんだよ。最後のは雄太郎だろ。後でしばくからな。
空はそう思いながら、とりあえずは起き上がる。
「み、皆月君? 起きたんですね?」
コクッ コクッ
空は頬杖をつき、外を見ながら頷く。
これならば氷川さんに起きていると思わせる事が出来て、皆から妬まれずに済む。
麗奈は空を見て、安心したかの様に胸を撫で下ろし、授業に集中する。
ふぅ。やっと視線が消えた気がするな。
空は小さく息を吐いた後、横目で麗奈を見つめる。
しかし、まぁ、クラスの奴らが妬む理由も分かるなぁ。こんな可愛かったらお近づきになりたいよな、僕は遠くていいけど。
「おい、皆月」
ビクッ
「今日は珍しく俺の授業を寝ずに聞いてるんだなぁ?」
「はははっ、当たり前じゃないですか」
空は先生に名前を呼ばれて、辛うじて返事を返す。
「寝ずに聞いているのは良い事だが、何故俺の方を見ない?」
「い、いやだなぁ先生。僕、先生の事大好きだから眩しすぎるんですよ!」
「はっはっはっ! そうかそうか! 何を言ってるかよく分からないが…じゃあ、大好きな先生のこの問題を解いてくれるよな? さっきまで教えてた通りにやれば解ける問題だぞ?」
カン カン
黒板を叩く音が聞こえる。
ま、まずい!! わ、分からない!!
僕は海外で小学生の時に名門の大学院を卒業している。高校レベルの数学の問題なら暗算で解ける…だが…
まず問題が分からねぇ!!
問題を見るには黒板を見ないと行けない。
しかし! 見ると氷川さんに僕の顔を見られてしまう!
…ここは分からないと正直に言うか? いや、ダメだ!! この先生、僕には何故か厳しくて授業終わった後とか次の授業の準備を手伝わされる!! そうなったら折角の僕の休み時間が!!
空が絶望していると、窓に反射している麗奈がギリギリ見えた。
麗奈は僕に向けてノートを広げて、何かを伝えようとしている。
空はそれを見る。
……なるほどな。
僕が外を見てるっていうのに…本当にいい子だ。
そして大きな声で、堂々と答えた。
「答えは4です」
「ふむ…」
先生が窓に反射して顎に手をつけている事が分かった。
ありがとう氷川さん。これで僕の安眠の時間は確保された。
「…今までの俺の授業が悪かったのかもしれんな。皆月、今日の昼休み、職員室に来なさい」
「え?」
「俺はこのグラフを書いて欲しかったんだが…」
グ、グラフ問題? だ、だって氷川さんのノートには『4』って…。
空は麗奈を窓越しに見る。
麗奈は顔を真っ赤にして、そっぽを向いている。
か、かわ……ゔんんっんっ!!
きょ、今日だけだかんな!
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