第11話 行き倒れ

「くぅ〜、やっと終わった」

 空は早朝、病院から出てくる。


 今日は救急の手術がなかったせいか、ボーッとしてる時間が長く、いつもより時間が長く感じた。


 まぁ、病人が少ない事は良い事だけどな…。


 いつも暇な時に読んでる小説も読み終わったし…今度の休みにでも買いに行くか〜。

 空はそんな事を頭の中で考えながら、欠伸を噛み締め、道を歩く。


 学校はこれから5時間後に始まる。

 授業中寝れないから、早く家に帰って風呂入って寝よ。


 そう思って、道を進んでいると


「ッ!」


 僕の家の近くで、うつ伏せで倒れている人を見つける。僕はその女性の元へと急いで走り寄り、膝を着く。


 今日は何も無いと思ってたんだけどな!


「大丈夫ですか!?」

「…腹減った」

「は?」






 ◇


「ぷはぁ!! 食った! 食った!! 助かったよ! ありがとう!!」

 空達は近くのマクドナルドへと来ていた。


「よ、よかったです」

 女性の前のテーブルには沢山のハンバーガー、ポテトの空が散乱していた。


 此処でこんなお金使ったの初めてだ…。


「ところで、何であんな所で倒れていたんですか?」


 こんな時代に行き倒れなんて早々いないと思うんだけど。


「あぁ、実は財布を落としちまってね〜! それに家の鍵、スマホもないしで、途方に暮れてたのよ!」

「そ、そうなんですか」


 うわっ、凄い不幸な人だな。


「悪いんだけど、スマホ貸してくれない? 家族に連絡を取りたいの! お願い!!」

「あー、いいですよ」

 空は彼女にスマホを渡す。


 はぁ。早く終わらせて家に帰って寝たい。

 そう思っていると、


「あ、娘? ご、ごめんって! でもいつもの事じゃん?」


 この人、母親なんだ? 随分若いな。ていうか今、いつもの事って言った? いつもこんな事されてたら家族も大変だろうなぁ。

 空は水を飲みながら思う。


「今何処から連絡してるかって? 実は親切な人に出会ってね〜! その人からスマホ借りて連絡してる!!」

「ーー?ーーーー!!」

「今? 病院近くのマクドナルド」

「ーーーー!ーーーー!!」

「本当に!? じゃあ〜よろしく〜!」

 電話が切れる。


「何て言ってたんですか?」

「この近くにいるみたいだから、すぐ行くって!」


 それは良かった。早く帰ろう。


「安心ですね。それじゃあ僕はこの辺で…」

 空は椅子から立ち上がる。


 ガッ


「ちょっと待っててくれたら娘が来るからさ! 此処の食事代は返すよ!!」

 彼女はそう言って空の腕を掴む。


「いえ、これから帰って学校に向けて寝ないといけないので」

 その女性はそっかぁ…と言って手を離す。


「それでは次は無くさない様に気をつけてください!」

「ふふっ! 分かった!本当にありがとう! このお礼は後で絶対返すよ!!」


 空はその女性に礼をすると、店から出る。


 僕の親みたいな人がいるなんて思わなかったな…あんな不幸な…。

 娘さんも大変だな…こんな朝早くに。


 空は小走りで家へと帰った。






 ◇


「ママ! この食べ物の空は何!?」

「奢ってもらっちゃった♪」

「奢ってもらった!?」

「うん♪」

「………はぁ」

「ほらほら! そんな落ち込まないでよ! 麗奈!」

「ママのそういう所、本当にダメだと思うよ!!」

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