第12話 終点
あー…眠い。
空はいつも通り、大きく欠伸をしながら登校していた。
何で学校にこんな早くから行かないといけないんだ。もっと遅くから始まってでも、授業は出来るだろ。
「ん? あれは氷川さんかな?」
空が前を見るとそこには、麗奈が大きな欠伸をして歩いている姿があった。
空は無視をする為、後ろをついて行こうと考え、先程よりも歩くスピードをゆっくりにする。
わざわざ話しかけるのもめんどくさいしな…。
空はボーッとしながら歩く。
「ん?」
「おはようございます」
「あ、お、おはようございます」
いつの間にか、空の目の前には麗奈が笑顔で仁王立ちしていた。
「なんで此処に?」
「え? そりゃ授業があるから」
「此処でですか?」
「ん?」
周りを見ると、そこは学校ではなかった。
「此処どこ?」
空がそう言うと、麗奈は大きく溜息を吐いた。
「…此処はオダマキ駅です」
「オダマキ駅?」
オダマキ駅って確か終点の…あれ? 僕って電車に乗ってたんだ。
「何で此処にいるんだ? 学校は?」
「い、行きますけど…」
どうしたんだ? 歯切れが悪いな…?
「じゃあ早く行こうよ」
「いえ…私は行く所があるので…」
「行く所? 何処に行くの?」
空が目的地を聞いた瞬間だった。
「別に良いじゃないですか! 此処にきたかったんです!!」
「…」
麗奈が突然叫ぶ。空はそれに驚き、言葉が出なかった。
「…失礼します」
麗奈はそう言うと、空から離れて行った。
あんな氷川さん初めて見た…。僕がしつこく聞いた所為だろうか? あんなに声を荒げるなんて思いもしなかった。
しかも、あの切羽詰まった様な悲しそうな表情。保健室で見せた緩み切った顔とは反対。僕を突き放す様な言い草。
…何かあったのだろうか。僕は非常識だとは思ったが、何かトラブルに巻き込まれているのではないかと思い、氷川さんをつけて行った。
ザッ ザッ スッ
何処に行くんだろう?
空はバレない様に、近くの物陰に隠れながら尾行する。
こっちにはもう…。
ウィーン
氷川さんは病院へと入って行った。
病院…か…。
さっきのあの言いよう…誰か身近な人があそこに居るのかな。
…悪い事したな。これは見なかった事にして、早く学校に行こう。
空は駅へと戻った。
◇
コンコンコン
「
ガラガラガラガラ
「お姉ちゃん?」
そこにはベッドの上で本を読んでいる少女がいた。
「また本読んでるの?」
「うん、私は大統領になるからね!」
「ふふっ! そう、なら頑張ってね」
麗奈は雪那と話しながら、ベッドの脇にあるテーブル上の花、着終わった服などを整理する。
「ママはいつも通り?」
「うん。いつも通りの不幸体質。昨日なんて朝まで行き倒れてたって」
「はははっ! ママらしいね!」
雪那は楽しそうに笑う。
でも…本当は…
「お姉ちゃん! 新しい学校ではどう?」
雪那が目をキラキラとさせながら、聞いてくる。
「…楽しいよ」
そう答えると、
「てことは、バスケ部に入ったって事だよね? 早くお姉ちゃんが出てる試合見たいなぁ!」
雪那は笑顔で答える。
「…」
麗奈はその答えに無言で微笑んだ。
編入してから今日で4日目。まだバスケ部には入部できていない。
私にはする資格がない…。
何故なら…
麗奈はテーブルの上に乗っている鏡に写っている自分を見つめる。
そして雪那に聞こえない様に呟いた。
「酷い顔…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます