第19話 ラーメン2

「あ、あぁ、こいつは僕の同僚です」

「え! 君もう成人してるの!?」

 彼女は空の方を見て、目を丸くしている。


「いや、バイト先っていうか…」

 空がアタフタと彼女の対応をしていると、ダンッという音が響く。


「初めまして。柏原って言います。よろしくお願いします」


 …柏原がコップを握りしめている。中の水が無くなっている事から、水を飲み干して机に強く置いたんだろう。


 というか何故に同僚を強調する?


「おい、柏原。もっと優し

「何ですか?」

「…いや、何でもない」

 美柑が凄い笑顔でテーブルに乗り出してくる。空は宥めようとする為、立ち上がろうとするが、美柑の鳥肌が立つ様な視線に大人しくソファに座らせられる。


 …ハッキリ言って凄い怖い。いつものほんわかスマイルではない。


 何というか…目が笑っていないスマイルだ。


 美柑は机に乗り出したまま、空の後ろにいる彼女へと視線を向ける。


「で? 貴方は誰なんですか?」

「私はただの主婦でーす!」

「は?」


 美柑の笑顔が固まる。


「しゅ、主婦? その見た目で?」

 美柑は目をパチクリとさせている。


「私ってそんな若い〜?」

 彼女はクネクネと身体をくねらせる。


 僕の後ろでクネクネするのはやめて欲しい。


「えーと…」

 美柑の顔からは、汗が大量に流れ落ちている。


「あの、すみません!」

「何で謝るの? 私は全然気にしてないよ!」

 美柑は腰を直角に曲げ、頭を下げる。それに対し、彼女は笑顔で笑って空の隣に座る。


「え、何で此処に座るんですか?」


 僕は早く帰って寝たいんだけど…。


「折角だからもっと話そうよ! すいませーん!!」

 彼女はそう言うと店員を呼び、注文をする。


「まぁ良いですけど…。それよりも今日は道端で倒れてないんですね」

「ふっふっふっ、甘いよ少年。私はもうあんなヘマはしないよ?」

「え? 倒れてたんですか?」


 僕達3人の話はラーメンを食べ終わっても続いた。



 12時頃。


「ふぅー、美味しかったね!」

「そうですね」

「まぁー、いつも通りですねー」

 空達は昼もラーメンを食べると、お店から出る。


 朝、昼ラーメンは中々キツい所があるな。


 うぷっ。

 空が吐き気を催している隣で、


「でもまさか不幸体質とはー」

「ハハハッ、恥ずかしいなぁ!」

 2人は談笑していた。


 この人達の胃袋はどうなっているんだ。しかもこの後、すぐそこのコンビニでケーキを買ってきているのだが…。


 凄く元気…柏原に関しては、いつもの柏原よりも元気じゃないか?


 空達は帰り道を進む。すると、分かれ道へと来て美柑と空、彼女はもう一方の道へと行くようだった。


「少年、少女よ! って、まだ君達の名前を聞いてなかったね!」

 彼女はまたガハハと豪快に笑う。


 元気な人だなぁー。

 空はその勢いに圧倒されていた。


 常に笑っているし、声は大きい。

 氷川さんとは似ても似つかないな。


「僕は空と言います」

「私は美柑ですー」

「空と美柑だな! 分かった! 私はれんだ! さらば!!」

 蓮は空達から見えなくなるまで走って行った。


「元気な人ですねー」

「ああ言う元気な人を見ると、こっちも元気になるな」

 僕達は、いつも通り談笑しながら帰った。




 ◇


「ハハハ、中々キツい所があるな…」

 彼女は膝を手に着き、息切れをする。


「…ふぅ、そろそろ行くか」

 そう言うと、彼女は走った道を戻った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る