第25話 スーパー セブン
「ふぅ…着いたな」
空は今、私服姿で麗奈のアパートの1室の前にいた。
改めて見ると、凄い年季も立っている様な風貌のアパートで、柱や柵は所々錆びている。
柱や柵に下手に触ったら、皮膚が切れてしまいそうだ。
「ま、今はそんな事どうでも良いか」
早く、蓮さんを病院に連れて行かないと。
空はインターホンを押す。
ピンポーン
「…」
何の反応もない。
「いないのか…?」
空はドアノブに手をかける。
ガチャッ
…開いちゃった。
「蓮さーん!」
少し大きな声を出して、名前を呼ぶ。
…
何の反応もない。誰もいないか。よく見たら靴も1つもないし…。
ヒラリ
ん?
空が玄関を見ていると、1枚の紙が足元に落ちて来る。
何だ?
『スーパー セブン! アルバイト・パート募集中!!』
アルバイト・パート募集…蓮さん、これに行ったのかな?
そう言えばラーメン屋で話した時、パート探してるとか言ってたな…。
「ま、何処に行ったのか全く分からないし…此処に行ってみるか」
空は麗奈のアパートの1室から出ると、スーパー セブンへと向かう。
スーパー セブンとはこの近くにある大型のスーパーだ。色々な物が売っており、空も学校の帰り、ご飯の材料を買う時によく利用する。
でも、あそこ…結構混むから仕事をするとしたらめちゃくちゃ大変だろうなぁ。
空はそんな何気ない事を考えながらも、歩を進める。
「おー、着いた着いた」
空はスーパー セブンの入り口から上を見上げる。スーパー セブンは3階建てになっており、1階は食品系、2階は服飾系、3階はゲームセンターになっている。
蓮さんがパートするってなると普通に考えて、1階かな?
空は店内に入ると上に行かず、1階を見て回る。
今日は平日の朝の為かまだお客さんが少なく、何人か子連れのお母さん達がいるくらいで、忙しい様子ではなかった。
えーと…蓮さんはっと…。
空は1階を数分探すが、どこにも見当たらない。
んー、こういう時は店員に聞いた方が早いか。
空は、近くでしゃがんで商品整理をしている髪がボサボサな男に声をかける。
…なんか親近感湧くな。
「すみません」
「あぁ?」
空が声をかけると男は前髪で隠れた鋭い眼光を掻き分け、此方を見上げる。
こ、こわっ…。
空は一瞬顔を引き攣らせるが、勇気を持ってもう1度話しかける。
「あの、人を探してるんですけど…」
「…人?」
「はい、氷川 蓮さんという方なんですけど…」
「あー…あの人の知り合いか。ついて来い」
男は立ち上がり、ポケットに手を入れて歩く。
男の背は高く、180ぐらいはあるだろうか。自分の身長より少し高く、ふんぞり返って歩いてる為か、空は異常に威圧感を感じた。
「こっちだ」
男が店の端にある両扉のドアの片方を開けて入る。
…店の裏側か。
入ると、そこは薄暗い空間で両側には箱が2、3メートル程高く積み上がっており、箱には野菜や果物などが書かれていた。
男はその箱の間をスルスルと歩いて行く。空は置いて行かれない様についてった。
「入るぜ」
箱の通路の突き当たり、小さな部屋の扉が開かれる。
そこには、ソファの上で横になっている蓮がいた。
「蓮さん!!」
空が蓮へと近づき身体に触れようとすると、男に腕を掴まれる。
「…焦んな、寝てるだけだぞ?」
「…そうですか。なら好都合です」
空はその男の言う事を気にせず振り払い、蓮の身体へ触れる。
「おい!」
男が少し声を荒げ、空の腕を再度掴まれる。
男の手は先程よりも力が入っていて、振り払う事が出来ない。
「…少しこの人の体調を診るだけです」
「お前が診て何が分かるガキ。蓮さんの知り合いみたいだったから連れて来たが…あんま調子に乗るなよ?」
空は男に胸ぐらを掴まれる。男の目はまるで獣の様に鋭く、今にも襲って来そうな目をしていた。
「………僕は医者だ、この手を離せ」
「あぁ? 何言ってん
「証拠です」
空は懐から医師免許証を出した。
すると、男が分かりやすく狼狽する。
空の胸ぐらから手を離し、医師免許証を受け取ると目を通す。
「…本物か?」
「………はい」
「ちっ…」
男は近くにあったイスに大人しく腰掛ける。
空は男が納得したのか、椅子に座るのを確認すると蓮に対し診察を行った。
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