第14話 アホの才能

「あ、あ、あ」

 銀髪美少女の顔は赤く染まっており、壊れたレコードの様に、途切れ途切れ同じ言葉を続ける。


 その銀髪美少女の顔はエメラルドの様な綺麗な目に、整った顔。


「あ、あにょ!!!」

 銀髪美少女が、大きな声で噛み倒す。


「「あにょ?」」

 空と雄太郎がハモる。


 そう言うと、彼女の顔が更に赤く染まっていく。


「…キュウ」


 バタッ


「なっ!?」

 空は急いで側に駆け寄って、彼女の手を取る。


「…少し脈拍が早いか。雄太郎!!」

「お、おう!」

 雄太郎が少し遅れて反応する。


「僕がこの子を保健室に連れて行く。次の授業遅れるからよろしく頼む!」


 空はそう言うと彼女の腕を取り、背負うと、彼女の匂いや女子特有の柔らかな感触が空に襲いかかる。


 …こういうの、普通の高校生だと反応するのかな。医者になると分かる。この状況になると治す側からしたら、そんな余裕はないんだな。


 空は駆け足で保健室へと向かった。






 ◇


「それで…空君は何でそこにいるのかしら?」

「いや、やっぱり男手があった方が良いじゃないですか。もしもの時に備えて」

「まぁ、そう言われればそうかもしれないけど…その格好で言う事ではないと思うのだけど」


 空は彼女の隣のベッドの上で、寝ていた。


「大丈夫。僕には正当な理由がある」

「貴方の仕事は終わったわよ。運び終わったら私に任せれば早く教室に行けるでしょ」

 保奈美先生は呆れ果てて、それ以上は何も言ってこなくなった。


 ふぅ。やっとこれで睡眠が取れる。


「保奈美先生ー。授業が終わる10分前ぐらいに起こしてー」

「…はぁ。分かった」

 空は保奈美先生のパソコンのタイピング音をBGMに聞きながら、眠りに落ちた。






 ◇


「えーーー…入ってよー…」

「…すみません」

 教室ではまだ2人の話し合いが続いていた。

 諦めずに入部を勧める愛梨、それを頑なに断り続ける麗奈。この2人の会話により教室は異様な雰囲気に包まれていた。


「何で入らないの?」

「…特に理由はないんですけど」

「なら入ろうよ!?」

「…すみません」


 こんな会話が何度も繰り返される。そんな中に、1人の男が


「おぉ〜っ!! 外人美少女が空に連れて行かれたーっと!!」


 誤解される様な言い方をしながら教室に入ってくる雄太郎に、教室の音が一瞬消える。



 キーン コーン カーン コーン

 そして、学校のチャイムが鳴った。


「まだ諦めないからねぇー…」

「…」


 愛梨はそう言うと教室から出る。麗奈はそれを何事もなかったかの様に無視をした。


「ん? なんだ?」

 その様子を見て、首を傾げる雄太郎。


 教室の中にいた人達はその状況を見て、心の中で大きく溜息を吐く。雄太郎のアホな発言と学校のチャイムが鳴ったお陰で、どうにか収まったが、これが続いていたら溜まったものではなかったのだ。


 一方は学校でも注目されているバスケ部の次期エースになる者、一方は数日前に転校してきて、その類稀なる容姿に学校中に瞬く間に噂が広まった美少女。


 教室にいた人達は、この時だけは雄太郎に大きな感謝を。


 その他に男子達は、雄太郎の言葉に「皆月、アイツ◯すぞ?」という気持ちを胸に刻み、机の上に血が滲む程、握り拳を握り涙を流した。

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