第5話 顔が…
「…2日目の授業にして分かったことがあります」
「急にどうしたのよ?」
空は保健室でソファに座りながら保奈美先生に言う。
「氷川さんって実は、メチャクチャアホなのではないかというのが浮上しているんです」
「はぁ」
保奈美先生は呆れ半分で聞いている。
「僕に問題の答えを教えていると思えば全て間違い、先生の言った質問に対して見当違いなことばかり言う」
「可愛いもんじゃない」
パソコンをカチャカチャさせながら適当に言う。
「しかもアホなだけじゃないんです! 何か裏が
「失礼します」
ガタガタガタッ!!
「……」
「猫ちゃん、あ、いや、すみません、体調が悪くて」
麗奈が中を見渡しながら、保健室へと入ってくる。
空は咄嗟にロッカーの中へと隠れた。
「ふふっ、それは仕方ないわね」
保奈美先生は笑っている。
「今、体温計を出すわね」
「は、はい」
保奈美先生は椅子から立ち上がる。麗奈はキョロキョロしている。
「…あ、あの、猫ちゃんっていいですよね。どこか気まぐれで、でも時々甘えてくる様なあの感じ…。たまりません!!」
麗奈の頬が緩みに緩んでいる。
お、おふぅ。あんな顔出来るんだ。
空はそんな事を思いながら麗奈を見つめる。
「猫ちゃんは隠れちゃった」
保奈美先生はどこか楽しそうに話す。
「えー、じゃあ探してみます!」
麗奈は保健室の中を歩き回る。
シャッ
「猫ちゃ〜ん」
カーテンを開ける。
ふっふっふっ、今日はそこに僕は居ないぞ。
空が調子に乗っていると、
「うーん、いないなぁ?」
麗奈の目が此方に向く。
「じゃあ…こっちかなぁ?」
氷川さんはこっちの方向に向かってくる。
ひっ! 何で分かるの!?
ここが氷川さんの不思議な所なんだ!!氷川さんはアホだけじゃなくて、何か裏があるアホなんだ!! 何故か変な所で鋭いし!!
そんな事を思っている間にも氷川さんは此方にドンドンと近づいてくる。
「隠れられる所は…此処とかかな?」
空の入っているロッカーに手をかける。
あ、終わった。
…まぁ、バレても僕が氷川さんに変な人だと思われるだけか。
空は諦めて全てを受け入れ、目を閉じた。
「失礼しまーす! 空の奴居ます?」
え!?
空は驚き、目を開ける。そこにいたのは雄太郎が保健室へと元気に入ってくる姿があった。
おーっ!! まさかの救世主!! 雄太郎! どうにかして氷川さんを連れ出してくれ!!
「あら、雄太郎君。空君ならそこに居るわよ?」
保奈美先生が僕の入ってるロッカーへと指を指す。
え?
空は保奈美先生から死刑宣告を言い渡させた。
「え!」
麗奈が驚きの声をあげて、恐る恐るロッカーの扉を開ける。
「な、ななんで!」
麗奈はとても動揺している様で顔を赤らめ、後ろへ後ずさる。
「…」
僕は保奈美先生の方を見る。
「アー、ツイ、クセデー」
保奈美先生は口を手で抑える。
棒読み過ぎるでしょ…。
保奈美先生を睨む。
「おー! 空! そんな所で何やってんだよ!」
雄太郎が空の方に近づいて肩を組む。
「いや、入りたくなったんだ」
「は? あのいつもダルそうにしてる空が!? 今日は槍でも降るのか…!!」
「アホ言ってないで、僕に何の様だったんだよ?」
空は麗奈の事を忘れて、雄太郎と話していると、
「皆月君…」
「はぁ? またエロ本の話かよ!」
「またって! 今回は別格なんだって!」
「皆月君っ!!」
麗奈が声を大にして空の名前を呼ぶ。
「は、はい?」
「…何であそこに居たんですか?」
「い、や…なんとなく?」
「さっきの聞いてましたか…?」
「えっと?」
「あの…猫の話とか」
「あー…あの氷川さんの顔がやばかった…
「ッ!!?」
ドガッ!!
…何もかも裏目に。
空は頬をグーで殴られ、気絶した。
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