概要
内紛の泥沼化に関与した過去を持つジークムントは、責任感と罪悪感から彼を弟子にする。しかし、指導は思いのほか難しく、悪戦苦闘の日々が続く。
ようやく師匠らしさが身に付き始めると同時に、ジークムントの体は徐々に衰弱していった。それは、かつて“老衰”で亡くなった自分の師匠と同じ症状だった。
寿命を感じながらも、平穏な日々をゆっくりと過ごしていく二人。
だが、内紛の亡霊が起き上がり、王都は不穏な空気に包まれる。
平穏を守るため、ジークムントは寿命を削って未来を見たが――
――倒れた彼に、ついに衝撃の真実が明かされる。
彼らの運命に偶然などなく、常に予兆の先に未来がある。
運ばれて
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新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!ほのぼの師弟ファンタジー×ミステリー!
主人公は隠居した占術師:ジークムント。カードを使った占いの腕前は、周囲の人々からの信頼も厚い人物です。しかも、文字通り未来を垣間見ることもできます。
……ただし、命を削りながら、ですが。
彼をそうまでさせるのは、過去の事件の影が今も彼に付きまとうためです。
未来を垣間見る占術師が、過去に囚われているというのは、なんという皮肉でしょうか。
そんな彼のもとに、一人の少年が弟子入りに来た時、全てが動き始めます。
登場人物の過去は仄暗く重いのですが、語り口が優しさを纏っています。
なので、「彼らなら、きっと幸せな未来に辿り着けるはず!」と前向きな気持ちで読み進めることができました。
タロッ…続きを読む - ★★ Very Good!!純然たるファンタジーの系譜
占星術。カード。魔術。暦の独特な言い回し。
ライム鳥の警告。星の吉凶。
かのJ.R.R.トールキンは『妖精物語について』というエッセイの中でファンタジーについて以下のように述べているそうです。
ファンタジーこそが「空想の産物に首尾一貫したリアリティを与える力」であり、イマジネーションはファンタジーに従属するものに過ぎない(『ファンタジーの大学』より)――と。
ならばこの作品に出てくる数々の要素《ファンタジー》は間違いなく作品世界にリアリティを与えるモノであり、ジークムントとドゥイリオの師弟(のみならず他のキャラクターたちも)が間違いなくそこに生きていることを教えてくれるスパイスでもあり…続きを読む - ★★★ Excellent!!!切なくて温かい、魔術師の師匠と弟子と苦いコーヒーの物語。
占いで未来を垣間見ることのできる、元占術師長のジーク。彼の下に、少年ドゥイリオが弟子入りしてきたところから、物語は始まります。
どうやらあまり幸せな境遇ではなかったらしいドゥイリオは、けれど細々としたことにもよく気がつくし、どうやら占い——魔法の才もある様子。最初は気乗りしなかったジークもやがて、彼のことが気に入り始め……。
占術師としては類稀な能力を持ちながらも、その能力ゆえに苦悩を抱えるジークと、こちらも何やら事情を抱えているらしいドゥイリオとのなんともほのぼのとした温かい魔法修行の日々から、やがて、彼らの過去が深く関わる思いもよらぬ展開に。
何を書いてもネタバレになってし…続きを読む