純然たるファンタジーの系譜

占星術。カード。魔術。暦の独特な言い回し。
ライム鳥の警告。星の吉凶。

かのJ.R.R.トールキンは『妖精物語について』というエッセイの中でファンタジーについて以下のように述べているそうです。

ファンタジーこそが「空想の産物に首尾一貫したリアリティを与える力」であり、イマジネーションはファンタジーに従属するものに過ぎない(『ファンタジーの大学』より)――と。

ならばこの作品に出てくる数々の要素《ファンタジー》は間違いなく作品世界にリアリティを与えるモノであり、ジークムントとドゥイリオの師弟(のみならず他のキャラクターたちも)が間違いなくそこに生きていることを教えてくれるスパイスでもあります。

単なる記号ではなく生きている〝人〟たちの悩みや葛藤がある一つの〝世界〟。
確かにそこに人が生きていると思わせてくれる〝物語〟。

児童文学の棚に並ぶ優れたファンタジーのエッセンスを含む――そんな作品をお探しの方はご一読あれ。

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