「ギムナジウム」とか「サナトリウム」とか、そういう単語を見ただけでも想像を掻き立てられるような、閉塞した一個の社会。そこで起きる濃縮された人間関係が描かれる物語って、独特の魅力がありますよね。
本作の場合は「毒草園」或いは「施設(アサイラム)」と呼ばれていますが、やはり外の社会とは隔絶された囲いの中で、二十名ばかりが生活している場が舞台となっています。
自分は、何となく冒頭から漂ってくる陰鬱な雰囲気に魅せられて読み始めたのですが、幾らか古風にも思える文体の雰囲気も相まって、最後までその期待を裏切らず、ジトッと湿り気のあるお話に仕上がっておりました。
恥ずかしながら自分は、全部読み終わった後も、作者の意図した仕掛けを完全に読み解けている自信が持てないでいるのですが(苦笑)……まあ、それでも、頭を働かせて読むに値する完成された作品であることは保証いたします。
もっと多くの方に読まれて良い作品だと思いますので、本物の小説を愉しむ器量をお持ちのかたは是非、ご一読をお薦めいたします。