我々は「彼」をどこまで信頼していいのだろうか

文章力も完成度も高くて面白い作品なので、おススメです。

文章全体に感じるうすら寒い不気味さ、静かな狂気に惹き込まれてじっくりと読ませて頂きました。

主人公の書いた手紙という小さな「窓」を通してしか、世界を見ることができない小説です。
タグに「信頼できない語り手」とある通り、その窓はちっとも信頼できないのです。
外の景色が見えていると思ったのに、用意された映像が映し出されているだけのディスプレイかもしれないのです。

こういう一人称小説を読む醍醐味を味わえる作品は大好きです。

序盤では主人公たちの暮らしている「施設(アサイラム)」がどういった場所かなど、重要なことが隠されています。
なんとなく孤児院かな? と思って読み進めていましたが、途中で別の物だったと判明します。

前々管理人がやばい人だったり、前管理人がやばいことをしていたり、なんなら自分たちもやばかったり、「あー、実はこれ色々やばかったんだ!」と次々判明して行くところが特に面白かったです。

「年長者を殺傷した場合、逆のケースより重い罰を科せられます。」とさらりとやばいことが書かれている施設の外がどんなやばい場所なのか気になるところです。

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