ほのぼの師弟ファンタジー×ミステリー! 

主人公は隠居した占術師:ジークムント。カードを使った占いの腕前は、周囲の人々からの信頼も厚い人物です。しかも、文字通り未来を垣間見ることもできます。

……ただし、命を削りながら、ですが。

彼をそうまでさせるのは、過去の事件の影が今も彼に付きまとうためです。

未来を垣間見る占術師が、過去に囚われているというのは、なんという皮肉でしょうか。
そんな彼のもとに、一人の少年が弟子入りに来た時、全てが動き始めます。

登場人物の過去は仄暗く重いのですが、語り口が優しさを纏っています。
なので、「彼らなら、きっと幸せな未来に辿り着けるはず!」と前向きな気持ちで読み進めることができました。

タロットカードの占いでは、同じカードでも向きによって、その意味が大きく変化する、と聞きます。

作中に散りばめられた伏線は、物語を自然に彩っています。
生き生きとした描写としても楽しめますが、それだけじゃあないんです。

登場人物のさりげない言動や、キーアイテムが帯びている秘密が明かされる様は、まるで、クルリと向きを変えたタロットカードのよう。
「まさかこんな意味があったとは!」と思わず唸ってしまいました。

ファンタジー作品としても楽しめますが、上質なミステリーとしてもオススメしたいです。

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