第4話「挨拶」
あの部活見学から三日、俺が再びあの部室に訪れることは無かった。
しかし、黒川のことはこの三日同じクラスで過ごすうちに少し分かった気がする。
黒川はどんな女の子か?
一言で言うならば、彼女は『ぼっち』だ。
「…………」
朝、
「おはようー♪」
「バリおはー♪」
教室では、俺の他にもギリギリで登校してきたクラスメイト達が他の友達と挨拶をしていた。
俺はそのまま楽しそうにしゃべるクラスメイト達の声を聞きながら、横目で黒川を見る。
「…………」
黒川にはあのクラスメイト達のように挨拶を交わすような友達はいない。それはこの三日間とも同じであり、挨拶どころか俺は黒川が教室で誰かと会話をするところすら見てない。
ひいき目に見ても黒川の見た目は悪くないと思う。しかし、転校してきたばかりの俺から見ても黒川は社交的な性格とは言えないので、それが彼女に友達がいない理由なのだろうか。
「…………?」
すると、黒川と目が合った。
そして、黒川は何かを期待するかのような視線をそのまま俺に向けて――
「うぅ~……」
えーと、黒川……さん?
一体その視線は俺に何を期待しているんですかねぇ……?
黒川の席は教室の入り口近くのため、俺が自分の席に座るには必然的に彼女の席の前を通る必要がある。
もし、これが友達なら普通は目の前を通る時に軽い挨拶くらいはするのだろう……。
だけど、俺は黒川に挨拶をすることはなく彼女の前を通り過ぎた。
「あっ……」
目の前を通り過ぎる俺に黒川が何か言いたそうな顔をしていた気がするが気のせいだろう。
だって、俺達は友達ではないのだから。
そして、俺はそのまま自分の席に座りHRが始まるのを待つことにした。
「うぅ……」
――と思ったら、何故か黒川がめっちゃ俺を睨んでるんだけど……
俺、何かしましたかね?
因みに、俺がHRのギリギリで登校しているのはHRが始まるまでの間、黒川のように『ぼっち』で無駄な時間を潰すのが嫌だからだ。
俺の高校生活において『友達』なんてものは無駄でしかないし、早く登校しても黒川のように無駄な時間を過ごすなら一分、一秒でも布団の中で惰眠をむさぼる方が有意義というものだろう?
「バリおは!」
「バリおは~」
……てか、さっきから気になっていたんだけど『バリおは』って、何?
その挨拶流行っているの? ダサくない?
「ちょっと……」
すると、驚いたことにさっきまで俺を睨んでいた黒川が俺の前にまでやって来た。
何だろう。挨拶しなかったことに文句でも言いに来たのか?
「え……何?」
「あ、あの……」
しかし、声をかけてきたにもかかわらず、何故か黒川は中々要件を言おうとしない。
……何だよ。喧嘩を売りに来たんじゃないのか?
「えっと、その……ば、ば――」
「……ばぁ?」
そして、彼女は何か言おうとしてた言葉を飲みこんで――
「……なんでもないわ」
それだけを言って、自分の席へと戻ってしまった。
「……変な奴」
黒川という女の子は一言でいうのなら美少女だ。
そんな彼女が何故『
ただ、分かることは――
「安藤くんのばか……」
俺が彼女の『友達』になることは無いということだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
YouTubeにて執筆風景を配信中!
【今回の作業アーカイブ】
https://www.youtube.com/watch?v=cZrEVnOeat0&list=PLKAk6rC5z4mR39sRFDtVHqVqlPwt0WcHB&index=3
詳しくは出井愛のYouTubeチャンネルで!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます