第一章【クラスメイト】
第1話「勧誘」
「部活ですか……」
「ああ、そうだ。できれば今週中までにどの部活に入るか決めて欲しい」
放課後。担任の先生に職員室へ呼ばれたので話を聞くと、何でもいいから部活に入れという話だったらしい。
どうやら、この学校の生徒は何かしらの部活に入らないといけないようだ。
確かに、九月になって部活に入ってない一年生なんて俺くらいだろう。それは呼び出されても仕方ないか。
でも、俺だって好きで部活に入らなかったわけじゃない。
「転校してきたばっかりなのに悪いな」
「いいえ、川口先生が謝ることじゃないですよ」
そう、俺は転校生なのだ。
親の仕事の事情で夏休みが終わって新学期が始まるこの九月という時期に転校してきたので、部活に入ってなくて当然だった。
「そうか。まぁ、部活に入れば友達もできるから、君にも悪い話じゃないだろ?」
「別に、友達なんていりませんけどね……」
担任の川口先生は先生にしては若く、仕事ができる大人の女性という感じで、生徒からの人気も高いが、俺みたいな陰キャの人間からすれば、ちょっとお節介なところがたまに傷だ。
「そう悲しいことを言うな。君の事情は知っているが友達は作っておいて損は無いぞ? それとも、あれか? 男子ならやっぱり『友達』よりも『彼女』が欲しいのか?」
あと、見た目は若いのに、この先生って言動がオッサンくさいんだよなぁ……。
「やめてください。セクハラで訴えますよ」
「フッ、生徒にそれを言われたのは君で二人目だな」
マジかよ……。この先生、俺以外の生徒にも似たようなこと言ってるのか……。
そのうち、マジで訴えられますよ?
「そうだ! 君が良ければ、私が顧問をしている部活があるんだがそれに入ってみないか?」
「いやいや……一体、どんな話の切り替え方ですか?」
何の部活かも聞いてないのに『よし、入りましょう!』なんて答えるわけ無いでしょう。
「でも、その部活は部員が女子だけしかいないぞ? つまり、入部すれば君のハーレムというわけだ。友達じゃなくて彼女が欲しい君にはピッタリだろ?」
「同じ部活になっただけで異性と付き合えるなら、日本の少子化はここまで進んでませんよ」
てか、その話題まだ引きずるんですか……。
「ハッハッハッ! 君は面白いことを言うな。実は、私が顧問をしている部活の部員が足りなくてな。転校生の君が入部してくれれば助かるんだがね?」
「そういう事情で俺を職員室まで呼んだんですか……」
この担任、意外とロクでもねぇな……。
「どうだ。これも何かの縁だ。この後、見学だけでもいいからその部活に行ってみないか?」
「新聞や宗教でももう少しマシな勧誘すると思いますよ……」
そもそも、部活なんてやる意味もない。
だって、俺は――、
「そうか。入部してくれるなら別に名前だけの『幽霊部員』でもいいんだがな……」
「……行きましょう」
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