第11話「未知との遭遇」
「ここが私の家よ。さぁ、上がって」
「お、お邪魔します……」
そう言われて招待された黒川の家は見事な一軒家だった。
この辺りの住宅街に一軒家があるということは、黒川の家は結構裕福なのだろうか?
「あ、靴はこっちの靴箱の中に仕舞っておくわね」
「おう……」
「フフ、初めて友達を家に連れて来たわ。これでママに『いつになったらお友達を連れて来てくれるのかしら~?』なんて言われないですむわね!」
いや、お前どんだけ俺に友達がいないの心配されているんだよ……。
てか、別に俺はお前の友達では無いからね?
「というか、初めて家にあげる奴が男の俺で良かったの? 親にバレたら気まずいだろ……」
「そ、それは……」
ここで口ごもると言うことは……やっぱり、黒川も少しはマズイと思っていたのだろう。
そうでなければ、俺の靴をわざわざ靴箱に隠したりしないもんな。
俺、親が帰って来て『この男は誰だ!?』みたいな展開になるの嫌だよ?
「し、仕方ないじゃない! 友達を家に呼びたい葛藤が勝ったんだもの……」
だから、お前どんだけ友達に飢えてるんだよ。
あと何度も言うけど、俺とお前はただのクラスメイトだからね?
「ここが私の部屋よ。今、ウチの猫を探してくるから中で待っててくれるかしら?」
「あぁ……」
黒川はそう言うと、俺を自分の部屋に残して猫を探しに出て行ってしまった。
え、いきなり男を家に招待しておいて自分の部屋に放置するとか流石に無防備すぎない?
まぁ、一人だからって何もする気は無いけどね? 多分、黒川もそれくらいは俺のことを信用しているから、部屋に一人で放置しているわけだろう。
「しかし、女子の部屋は初めてだけど……ぬいぐるみ多くね?」
黒川の部屋は女の子らしく可愛めの部屋作りになっていて、部屋のいたるところに某サン●オなどのキャラクターぬいぐるみが置かれていた。
もしかして、あの『プー太郎』とかいうクマのぬいぐるみも黒川の趣味なんじゃないのか?
うん、ワンチャンあり得るな。
「入るわよ」
「お、おう!」
すると、黒川が白い猫を抱えたまま起用にドアを開けて部屋に戻ってきた。
「待たせたわね。この子がウチの飼い猫の『ミャー太郎』よ♪」
「ミャ~!」
ミャ―太郎と言われた白猫は黒川の腕の中から飛び降りると、ダルそうな鳴き声を上げて大きく伸びをした。
どうやら、猫を飼っているというのは黒川の妄想ではなく本当のことだったようだ。
いや……だって、あの『練習』の前科がある黒川のことだから、ワンチャン猫を飼っているというのも俺を家に呼ぶための
「てか、ミャ―太郎って……」
黒川って、地味にネーミングセンス残念だよなぁ……
「何よ? ウチの猫に何か文句があるっていうのなら、撫でなくてもいいのよ?」
「いえいえ、とっても素敵なお名前だと思っておりましたとも」
そう、例えば1998年代くらいのセンスを感じる良い名前だよね。
「ほら、ミャー太郎? おいで……」
「ミシャー!」
「うーん、家族以外の人の前に出たの初めてだからか? ミャー太郎、警戒してるみたいね」
俺のお世辞も虚しく、ミャー太郎は撫でようとする俺に威嚇をして、とても撫でれるような状態ではない。
てか、コイツ見かけによらず凶暴なニャンコだな。
「ねぇ、これ大丈夫? 俺、爪で引っかかれたりしない?」
「はぁ、仕方ないわね……。こうなったら、にゃーるを持って来るしかないわね」
「『にゃーる』? ……何それ?」
「猫用のおやつよ。にゃーるさえあれば、どんな猫も病みつきになって、にゃーる無しでは生きれない体になっちゃうんだから♪」
「そのおやつ大丈夫なの……?」
「ちょっと、取って来るから待ってなさい」
そう言うと、黒川は再び部屋から出て行ってしまった。
しかし、また一人で放置されてしまったな……。
「いや、今度はミャー太郎もいるか」
「ミシャ~ッ!」
……うん、どうやら俺はミャ―太郎に思いっきり警戒されているようだった。
「危うく引っかかれるかと思ったぞ……」
すると、部屋のドアが引いて誰かが入ってきた。
黒川の奴、もう戻って来たのか?
「黒川、戻って来るの早いな……」
「もう、おねーちゃん! 帰ってるなら、顏くらい見せてよね~?」
――と思ったら、見ず知らずの女の子が入ってきたんだが?
「「え、誰……?」」
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