第38話「お弁当交換」
「……君達は一体何をしているんだ?」
幼稚園のクリスマス会も週末に迫り、演劇の準備も終わった俺と黒川が部室でお弁当を食べていると、
「何って昼飯の弁当を食っているだけですけど……」
「先生は私達がお弁当を食べている以外にどう見えるですか?」
黒川の言う通り俺達はただ部室でお弁当を食べているだけだ。
だから、何もおかしい所は無い。
「いや、私が聞きたいのはどうして黒川が安藤にお弁当を食べさせているんだ? ということなんだが……」
……そう、川口先生の言う通り、ただ俺が黒川にお弁当を食べさせてもらっているところを除けば……
「君達は付き合っていたのか……?」
「「違います」」
一体、川口先生は何を言っているんだ?
「先生、俺はもう直ぐ転校するんですよ? なのに、彼女なんか作るわけ無いじゃないですか」
「それに、私の場合は恋人以前にまだ友達ですら作れてないわ」
確かに、黒川の場合は恋人よりも友達を欲しがりそうだよな。
「なら、好き合っているのか……?」
「「違います」」
「なら、どうして君達はそんな状況になっているんだ!?」
だから、川口先生はさっきから何を言っているんだ? 何で俺が黒川にお弁当を食べさせてもらっていただけでそんな話になるのだろう?
「川口先生、変な勘違いはしないでください。俺達はただ昼飯を食べていただけですよ?」
「そうよ。ただ私が彼に手作りのお弁当を食べさせていただけでそんな勘違いをするなんて……これだから、独身は」
「いや、これは誰でも勘違いするだろ!? というか、独身は関係無いだろ!?」
お、珍しい……先生がツッコミ役に回っている。
因みに、俺が黒川に弁当を食べさせてもらっていたのは別に変な意味は無く、単純にいつも通り俺が黒川のプー太郎2号として友達の代わりに弁当交換とやらをしていただけだ。
『なんか友達の間には、お互いのお弁当を交換させて食べさせ合いっこする風習があるらしいのよ! え、何? お弁当を持って来てない? なら、仕方ないわね……明日、私が貴方の分のお弁当を作って来てあげるからそれをお互いに食べさせ合うわよ!』
――という流れであの状況になっただけである。
まったく……黒川の奴、俺が友達の代わりになるって言ってから要求がドンドン我儘になっているような……てか、お弁当交換って本当にこれであっているのか?
俺も友達がいないからよく分からないんだよな。
「川口先生。それより、いきなり来て何の用ですか?」
「そ、それより……」
そもそも、黒川はあのお弁当交換に疑問を思わないのだろうか?
「まぁ、いいか。私が来たのは……安藤、君に用があったからだ」
「え」
「俺……?」
「まぁ、話自体は黒川にも関係あることだからそのまま聞いてくれて問題は無い」
何だろう? 転校関係の話は済んでるし、いまさら先生に呼び出されることに心当たりはないんだが……
そして、川口先生はその内容は口にした。
「残念だが、演劇の脚本にダメ出しがきた」
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