金曜日の爆弾魔事件に関する調査報告書
金曜日の爆弾魔事件に関する調査報告書 前書き
年の瀬迫る昨今、この街の話題の中心にあるのはおそらく三つの事柄で、一つ目は旧首都・東京の都知事の恥ずべきスキャンダル、二つ目は来年度からのオリンピック再開の決定、そして最後に「金曜日の爆弾魔」についてであろう。
同居を始めて一年以上たつ私の同居人の注目も件の爆弾魔に向けられ、彼女は強い関心をもってここ数日のテレビや新聞による報道を追いかけていた。世間というものにひどく疎く、そして興味を持つことのない彼女が、こうして皆さまと同じものに対して関心を抱くというのは非常に珍しいことで、私はむしろそんな彼女の方に注目していたのだった。
最初の爆破事件があったのは十一月の頭の頃で、国立図書館の施設の一部が被害にあった。幸いにも死傷者はなく、焼失した資料も代替のきく価値の低いものばかりであったが、しかし本や読書を愛する私たちにとっては非常に許せない事件と思った。それから十二月末の今日に至るまで三回の爆破事件が発生し、合計の死傷者は数十人にまでのぼるほどである。そしてそのどれもが金曜日に行われたことから、この爆破事件の犯人は「金曜日の爆弾魔と呼ばれているというのは、もはや周知の事実だろう。事件が起こるたびに私は思い返すのだ、我々は未だ戦争状態にあるのだと。
実質的な戦闘行為こそ停止しているが、しかし未だに諸外国からの圧力は強い。そんな緊迫した状況下にあり、政治体制や国防体制に疑問をもって行動に移す人間は少なからず存在している。爆弾魔の正体はそういった反体制派によるものか、あるいは
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