第15話 学園生活〜結局男はみんないい奴なのだが?

「おい!お前だよ!」


 再びそう言いながらこちらに近づいてくる男。金髪で黒い瞳の小太りの男だった。髪は染めたのだろう。


「おいっ!」


 すると怒った勢いで俺の胸ぐらを掴んだ。


「ひゃっ、乱闘よ……」

「王子、大丈夫かな……」


 周りからも心配する声や不安そうな声が上がる。


「俺様よりチヤホヤされてんじゃねぇーよ!」


 あっ、そこに怒ってるの?


「別に」


「あ?」


「チヤホヤされているつもりはない——よっ!」


「おぉっ!?」


 俺は胸ぐらの手を握り、その男を回転させた。回転した男は尻餅をついて痛そうにしている。


「悪いけど先に名前を名乗ってもらってもいいかな? 俺は鳴海隼人だ」


「グッ、俺は古畑颯汰ふるはたそうただ……」


 悔しそうに下唇を噛み締めながら自己紹介してくれた。


「古畑か……。古畑、いきなり現れて胸ぐらを掴むとはどういうことだ?」


「は、隼人くん……?」


 俺の後ろにいる湊が少し怯えたようにしている。多分、怯えているのは古畑じゃない。先ほどまでと雰囲気がガラッと変わった俺だと思う。

 俺じゃなくて湊が掴まれていたら危ないと思ったからだ。


「チッ、そんなの……お前がイケメンだから。結局、イケメンはでもモテモテで……」


 ん? こっち? まさか、古畑も————


 そう思ったその時、古畑が俺の掴んでいた手を振り解き、立ち上がった。


「覚えてやがれっ!」


 そんなお決まりのセリフを残し、走って行ってしまった。


「隼人くん、大丈夫だった?」


「あぁ平気だ」


 いきなり胸ぐらを掴まれた時はビックリしだが。


「あっ、聞きたかったことがあるんだけど、この学園に男は何人いるんだ?」


 確認しとかないとな。


「んーと、隼人くんを入れて全員で6人だよ」


 ろ、6人……少ない…。


「1年生は僕と隼人くんとさっきの古畑くんの3人だけだよ」


 3人か……。


「古畑って男はいつもああなの?」


「うーん、少し前までは大人しかったけど……」


「けど?」


「いつからかあんなに傲慢になって……。でも女の子達は傲慢な方も大丈夫って言ってたから学園生活に問題はないと思うよ」


 と言い周りにいる女の子達に視線を向けた。

 女の子達は首を縦にする者もいたり、横に振る者も若干名いた。


 男という存在ならどんな性格でも良いってことかな? それほどまで男は貴重なのか……。


「隼人さん」


「どうしたのみぞれさん?」


 先ほどから何も言わず見守ってくれていたみぞれさん。


「古畑さんはいつも屋上にいるという噂があります」


「みぞれさん……!」


 これは行くしかないな。


「ありがとうみぞれさん」


「いえいえ」


「湊」


「何かな隼人くん?」


「俺、古畑がなんでああなったの分かった気がする」


「えっ」


「それにさ、数少ない男子同士なんだ。仲良くしたいだろ?」


 すると湊は俺が言ってることが理解できたのか顔を明るくし、首を縦に振った。

 そして俺と湊は古畑がいるという屋上へと向かった。



「おーい、古畑ー」


「なっ、なんの用だお前っ!」


 屋上へ行くと予想通り古畑がいた。


「確かにお前に用があってきた」


 古畑の前に立ち、口を開く。


「こんなことを言うのはなんだか……」


「あっ?」


「お前……イジメられていただろ?」

 

 そう言うと古畑の顔が青ざめた。恐らくあっているのだろう。


 すると古畑が険しい表情をし、口を開いた。 


「ああ、そうだよ。こんなデブだがら毎日イジメられていたんだよ……。でも朝、目覚めたらしてて……」


 その言葉を聞き、思わず古畑の肩を掴む。


「お、おいっ! なんだよ!?」


 古畑も転生者か? でも朝目覚めたら貞操が逆転していたと言うし……。


「いや、ごめん。少し驚くことがあったから」


「は、はぁ……?」


 古畑は困惑気味である。


 俺は古畑と湊に交通事故に遭い、気づいたら他人の身体に乗り移っていたことを話した。


「なるほどな……」


「そんなこと、あるんだね……」


 2人とも俺の話を素直に信じてくれた。

 

 まぁ朝目覚めたら貞操が逆転していたというあり得ないことが起きてるからこっちも信じるか……。

 ちなみに湊も朝目覚めたら貞操逆転していたという。そして2人とも、この世界は元とは違うらしい。


 俺の場合は死んで身体が別の人に乗り移ったことで転生したと思ったが、2人は朝目覚めたら貞操逆転世界にはというそとを元にすると、なぜ俺たち3人がこの世界に来た原因がわからないな。


「話を戻すが、古畑がああなった原因はイジメが関係しているんだな」


「お、おう。こんなデブな俺でもモテるんだ。そ、そりゃぁ調子に乗るだろ……っ!」


「なら痩せればいいじゃん」


「はぁ?」


「お腹だって少し出ているだけで痩せれば絶対カッコいい良いと思うよ」


「そ、そうか……?」


 イジメられていたのが体型が原因なら痩せれば良い。それに元の性格は良さそうだし、痩せたらいい奴になると思う。


「手伝ってあげるよ。なんせ俺達、友達だろ?」


「と、ともだち……」


 俺がそういうと顔を明るくさせた古畑だったが、急にそっぽを向いた。

 鼻を啜る音が聞こえる。


「古畑、泣いてるのか……?」


「うっ、うるさいっ……!」


 泣いてるというか照れてる?


「湊も友達だよなー?」


「うんっ! 僕も友達だよ!」


「だからうっさいっ!」


 やはり照れていたようだ。古畑、いい奴じゃん。


「あ、ありがとう2人とも……」

 

 涙目で頬を赤らめた古畑がそうお礼を言ってくれた。

 

 多分、今まで無理してキャラを作っていたのだろう。みんなにも早く古畑の良さを伝えたいな。


 学園生活1日目にして貞操逆転世界の学園も悪くないと思った。

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