第11話 学園生活〜意外と親切な人ばかりなのだが?

 学園生活とは何か。

 新しい環境に新しい友達、体育祭に文化祭といった学校行事でさらに友達との絆が強くなり、人生においても充実した期間であると思う。


 それなのに……


「今日来るの男だって!!」

「ひゃっフゥゥァァァア!!」

「楽しみすぎてもうダメぇぇぇぇ〜」


 教室から聞こえる雄叫び。これは女子のものである。


 こんなの俺が求めていた学園生活じゃないよ………。ちなみに今は廊下で待機している。

 あの後、姉さんと分かれて職員室に行き、担任の先生と面会した。担任の名は橘清美たちばなきょうみ。ジャージを着ている体育系の先生だった。


「こらうるせーぞー! おい鳴海、入ってこい!」


 橘先生からそう言われたので教室へ入る。

 教室に入ると先程まで騒がしかったのがいつのまにかシーンと静まりかえっていた。 静かというか固まってる……のかな?


「今日からこの学園に通います鳴海隼人です。よろしくお願いします」


 ふう、噛まずに言えたな。


「じゃあ早速だが、鳴海に質問がある奴、いるかー?」


 橘先生がそう言うとものすごい勢いでみんな挙手し始めた。


「はい、そこ」


「やったー! 鳴海くんに質問ですー!彼女はいますか?」


「いないよ」


 いないと答るとみんな騒がしくなった。どうやら喜んでいるようだ。


 というか本当に女子しかいない……。


 教室を見渡すと俺以外全員女子。しかもかなり可愛い。


「じゃあ次そこ」


「好きな料理はなんですかー?」


「無難に肉じゃがですかね」


 俺はできるだけ爽やかな笑顔を意識しながら答える。


「次そこ」


「彼女とか欲しいですかー?」


「そうですね。明るくて一緒にいると楽しい彼女が欲しいです。この学校に通ってるうちにそういう人を見つけられたらいいなと思います」


 そう答えるとまたキャーキャーと騒がしくった。

 その後も質問は続き、結局40分も質問され続けた。


「さてと、そろそろ鳴海の席を決めないとな」


「さてじゃないですよ。もう授業始まってますよね?」


 隣のクラスとかに迷惑かかってないといいけど。


「じゃあ鳴海の席はーー」


 無視された……。

 改めて教室を見渡すが朝倉さん達はいなかった。ちょっと残念だ。


「ここは頼れる委員長の冬瀬でいいか」


「よろしくお願いします」


 冬瀬さんと呼ばれてる人が席を立ち、こちらにお辞儀をしてくれた。


 お嬢様結びした白色の髪に青い瞳、絹のような白い肌。育ちが良さそうな見た目をしている。そしてかなりの美少女だ。


 その冬瀬さんの隣に座ると、周りの女子達がまた質問攻めにあった。


「はいはい皆さん、鳴海さんが困っています。落ち着いてください」


 冬瀬さんがそう注意してくれるとみんな大人しくなった。


「鳴海さん大丈夫でしたか?」


「大丈夫だよ。ありがとう冬瀬さん」


「いえ、委員長として当然です」


 冬瀬さんはいい人だな。

 あっ、聞きたいことがあるんだった。


「あの冬瀬さん。朝倉さんは何組ですか?」


「陽茉利さんですか? 陽茉利さんは2ーBですよ」


 隣のクラスだったか。でも同級生でよかった。


「鳴海さんは陽茉利さんとお知り合いなんですか?」


「うん。道に迷っていたところを助けてもらってね」


「そうだったんですか。では次の休み時間に行かれてはどうですか? 陽茉利さんきっと喜びますよ」


「そうしようかな」




(陽茉利side)


 隣のクラスはとても騒がしい。その声は喜びに満ち溢れていた。


「鳴海くん、うちのクラスじゃなかったねー」


 前の席の真央ちゃんが残念そうにそう言う。


「うん……」


 残念なのは私も同じだ。


 鳴海隼人くん

 私がたまたま学園に来た時、道に迷っていたのを助けた男の子。

 鳴海くんは他の男の子と違う。

 優しくて、格好良くて、人が良い。

 普通の男の子は女の子なんかに優しくしない。酷いところでは奴隷みたいに扱っていあると聞く。


 でも鳴海くんは違う。


「私達のこと、覚えているかしら?」


 今度は隣の席の詩織ちゃんがそう呟いた。


「ど、どうなんだろうね……」


 朝、挨拶をしてくれたことから覚えてはくれてると思うけど……。


 そんなぼんやりとした気持ちでいると1時間目終了のチャイムが鳴った。

 鳴海くんに会いに行きたいけど絶対人がいっぱいいるよね。


「朝倉さん!」


 突然、1人の女生徒が私を急いだ様子で呼んできた。


 ど、どうしたんだろう……?


「男の子が呼んでるよ!」


 そう言われた瞬間、頭の中にあの男の子の顔が浮かんだ。


くんだって!」


 まさか会いたかった人から会いに来てくれるなんて……。


 私は鳴海くんのところに駆け足で向かった。


 

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